アナタが世界でボクが色。 | ナノ


6

クラスはきちんとわかってたりする。

クラスへと続くであろう長い廊下を先輩の背中から眺めながらそんな事を考える。

『1ーB』だって事。

実は流君のクラスに居た時にクラスの人が話してるの聞いて知ったの。
「藍川様って本当は1-Bのクラスらしいよ!」
「何でこちらにっ?」
とか最初の頃言われてた。
うん。それ、オレも分からないの。流君も「どうでもいい事」らしいし。
途中から公認みたいになって先生たちも何も言わなくなってたからなぁ。だから一年生の棟には全然行った事がなくて迷った次第なんだけど、何故か森の中に入ってたというね…行けると思ったんだけどなぁ…。

まぁ、あとどうしても気になるのが、何故か様付けで呼ばれてる事なんだよね。オレ以外にも様付けされてる人居るしんだけど、なんでだろ。
様付けとかちょっと緊張するよねっ。聞く機会もなかったし今度聞いてみようかなぁ…。


「ここ。真っ直ぐ行けば一年の教室だから」


物思いに耽っていると、ふいに先輩がそう言ったので思考の波から引き戻された。一瞬なんの事だかわからなくてぱちくり大きな瞬きをして見せて考えると、そう言えば先輩に送って貰ってたんだと思い出し慌てて返事を返した。
一瞬遅れたオレの返事を何故か苦笑しながら背中からゆっくり降ろしてくれたのでまたまた慌ててぺこりとお辞儀をする。


「ぁ、ありがとうございましたっ…」


着地した足が思った程痛くなくなっててびっくりしていたら、ぽんと頭に大きな手を乗せられて柔らかく撫でられた。


「暇だったしな。じゃ。もう迷うなよ。流生とかいう奴にもよろしく」


そう手を引くと、ひらひらと後ろ手に手を上げて元来た道を颯爽と帰って行った。心なしか校内なのに爽やかな風が感じられる。いやいや、最早肩に掛けたブレザーが瞬いてる気さえする。

きゃーっ格好いい!
なにあれなにあれテレビに出てきそうな格好良さだよ!サイン欲しい!


「へへへ…また逢いたいな」


自然にそう言葉がでる。
頬が緩むのを両手で直しながら、そう言えばと考える。
だってオレが先輩を心配するんだったのに逆に心配されてしまうオレって…。

ううんっ!こうなったら今度会う時は、先輩に病院をすすめよう!
うん!

オレはちょっとした決意を胸に秘めて数回頷く。そして、ふとまた何か頭の隅で引っかかって先輩が帰って行った道をもう一度眺めた。




あ、




「先輩の名前聞くの忘れてた…」



広い廊下の真ん中でオレの声だけが小さくこだました。

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