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そうこう考えていたら、唐突に先輩の足が止まった。
そろりと辺りを見てみると、もうそこは校舎の中。何回見ても豪華としか言いようのない内装が広がっている。
それから最後に先輩に習って前を見ると白く清潔感のあるドアが目の前に。
その上には『第3医務室』と刻まれたプレートが光っていた。
医務室って、
保健室って意味…だよね?
「あの…ここ医務室って」
部屋の中をキョロキョロ見ながら不思議に思って首を傾げる。
「ここあんま教師来ねぇんだよ」
「そうなんですか…?」
先輩の答えに更に疑問が深まりつつ、大人しく頷く。
話している間にもドアがスライドされて、無遠慮に奥へ進むとオレはベッドへと座らせられた。
先輩曰わく、先生が居ると色々書かなきゃいけなくなるらしくて、あまり来ないというここに連れて来てくれたらしい。
それは分かったんだけど
んーと…これ、オレどうしたらいんだろ…?
「……包帯ねぇな」
そう呟きながら湿布を棚から数枚持ってくるとオレの足首に丁寧に貼って、またハンカチで固定してくれた。
なんか手慣れてる。
「ぁ、と。ありがとうございます…」
「いや。そのままだと酷くなるから一応、な」
何から何までお世話に成りっぱなし…申し訳ない。
先輩って結構心配性なのかな。初めて会ったオレにここまでしてくれるなんて………格好よすぎるよね。
何となく日向組の過保護な彼を思い起こさせる。
元気かなぁ…銀君。
全然会ってないしな…
と、ちょっとしんみりした所で先輩が口を開いた。
「教室連れてくのはいいが行ってもあと二、三時限しか受けられねぇぞ」
!その事はですねっ!
「ぁの…自分の教室、行くの初めてなので行くだけでもと思って」
あの森をさ迷ったり、先輩とお話したりとで結構思いのほか時間が経っていたのはここに入る時、時計を見たのでわかった。
でも、初めてだし…!
担任の先生にだけでも挨拶しなくちゃ。今まで流君の教室に通ってた訳だし(不可抗力)。
「あー…お前確か三年の教室に通ってたんだったか確か」
「ぁ、はい…。すみません。成り行きで…」
わがままを通してる自覚はあるので、申し訳なさそうに謝ると
「お前等に常識が通じないのはもう知ってるしな」
先輩は苦笑しながらそう言って、くしゃりと頭を撫でてくれた。
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