14
鉄のバットで思いっきり壁を殴ったような、無機質な轟音が廊下に響いた。
やけに静かな空間に誰も口を開こうとしない。
流君が一瞬にして振り上げた拳は、当たる事は無く赤髪の人の真横の壁に置かれていた。
ミシリッと壁の音とは思えない音がなって、スッと拳を引く流君の顔は怒気も何も浮かんでいない。
ただ淡々と、
「消えろ」
感情の失せた声でそう言って身を翻した。決して大きい声じゃないのにその声は廊下の隅々まで届くような重みがあった。
その纏うオーラや空気感、行動が常人とかけ離れているのがはっきりとわかる。
壁に背を預けた赤髪の人は、血の気の失せた顔で目を見開いていた。
オレは急に伸びてきた腕に強引に引かれて肩に担がれ連行される。
ズレそうになる眼鏡を片手に、落ちないように必死で服にしがみついた。
◇◇◇
見知らぬ転入生が廊下の彼方に消えるても数秒、動くことが出来なかった男、御堂王我は腰から崩れた。
「………っ」
「「、会長っ?!」」
我に帰ったように
王我に近付いてくる双子、楓と椛の顔は真っ青だ。二人とも慌てたように王我に寄り添う。
「な、何なんだアイツ…。」
「かっ会長大丈夫っ?」
「常人の目じゃねぇ…」
静かすぎる廊下に、無意識に震える声を無理やり押さえた。
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