初めての恋を初恋という。

恋っていうのは、どきどきして、胸が苦しくて、でもその苦しささえすっごく幸せで。周りが全部、当たり前のものでさえも、きらきらしてきらきらきらきら輝いて。毎日が楽しくて。相手の仕草言葉に一喜一憂して。

本とかで描かれる理想の恋なんて、現実で起こりっこない。わかってる。

恋なんて、どんな恋であろうと、するもんじゃない。そう思ってしまうわたしがいる。

初恋はかなわない。そうだったっけ。




「先生、もう疲れました」


わたしは保健室のドアを開けた。たったひとこと告げて、星月先生を通り過ぎ、ベッドにダイブする。


「…大丈夫か?」

「というわけで、寝ます」

「おいおい…逃げるな」

「はーいはい」


もううるさいな…。

枕にぼすっと顔を押し付ける。清潔な匂いがした。なんて思いながら、目を細めた星月先生をちょっと睨む。

がったん、とドアが開いた。


「お!」

「陽日先生、ういす」


背がわたしより低い…ちっこい陽日先生がいた。

あのさ、寝させてくれない。

もそもそと布団に潜り込もうとしたら、星月先生に阻まれた。


「お前、なんでここに…青春はどうしたんだ!?」

「陽日先生」


はいとだらりとわたしは片手を上げた。


「な、なんだ!?」


あまりに力のない声に陽日先生は食いついた。


「青春に疲れました」

「な、何ぃ!?」


いや、そんなにびっくりしなくても。


「何かあったのか!?」

「青春に敗れたみたいな?」


首を傾げて苦笑してみたら、思ったより近くから声が。


「失恋ってこと?」

「まあ、そんな感じで…って、水嶋先生」

「何?」

「近い、です」


いつの間に隣のベッドに!?しかも近いんですけど!近い近い近い…!!


「こら水嶋!生徒に、馴れ馴れしく…!!」

「いいじゃないですか、別に」


よくねえよ。

ぽんぽんと水嶋先生が肩を軽く叩いてくれた。それにまた陽日先生が騒がしくなった。隣で、星月先生が欠伸をしている。

なんだ、コレ。

もう、笑いたくなってきた。布団を口元まで引き上げて押し殺して笑う。


「まあ、いいや」


大好きだったけど。

今は、考えないことにする。

多分、忘れた頃に、また思い出して、苦しむんだろうな、わたし。

今は、忘れられそうだから、もういいや。




ねえ、バイバイしよ
破れたわたしにさよならを


失恋したヒロインと先生組。
管理人、スタスカ未プレイのため、ご了承ください。



20110404

prev | next
mokuji



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -