「わたし、泣かないようにしてるの」

「…どうしてかな?」


にっと歪んだ笑みで口元を彼は飾った。

長い足を組んで。無駄に様になるその格好が腹立たしい。

別に悲しくなんてない。別にね。

臨也が誰と過ごそうとさ。女の子にうっとりするような笑顔を浮かべてたってさ。

もう、慣れたの。

慣れたと思ってたの。

…悪い?


「嘆いてても何も変わらないって教えられたの」


物事から変わってくれたら楽なのになあってたまに思うよ


「…だから泣かないの?」


すと臨也が立ち上がる。

歪んだ笑みのそのままに。


「そう」


そうだよ。

悪い?悪いの?


「…へえ、そうなんだ」


目頭が熱かった。涙が滲む。滲む。

もうしらない。もうしらない。

いざやなんかしるもんか。


「わかれる」

「は?」

「いざやとわかれる」

「…本気?」


本気も何もないよ、臨也。

わたしだけが一方的に振り回されるんだもん。そうだよ。わたしは本気だよ。

うんと頷こうとしたら、案外、臨也の焦った顔が近くにあった。


「ねえ、本気?」

「……」

「ねえってば」

「……」


固まって黙ってしまったわたし。

いつになく見たことのない臨也に吃驚しすぎて、思考が動かない。追いつかない。

臨也に腕を引かれて、小さく呟いた声にまた吃驚させられた。


「…悪かったよ」




泣かないでおやすみ


(…浮気じゃあないの?)
(違うから。…安心してよ)
(じゃあ、安心させてよ)
(そうだなあ…。じゃあさ、なまえ)

わたしは、
その声に振り返って、


20110326

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mokuji



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