「すんません!どいて!」
がっと足を蹴り出して勢いよく扉を蹴破った。女として終わってるかもだけど、気にしていられない。ああもう…!あとで直すから!扉を蹴破った私と隊士の何人かと目があった。目をそらし、全速力で走り出す。オイ、走ってんじゃねえと他の十一番隊の隊士に怒鳴られそうになったが、その私の後ろを見て、ぎょっと目を見開いた。
「ざ、更木隊長…!?…あいつ、なにやらかしたんだ?」
何もしてない!と叫び出しそうなのを押さえ込んで、隊士の人たちをすり抜ける。すり抜ける必要もないくらい、皆離れてるけれど。助ける気がないのはわかってる。前へ前へと足は止まらない。
「…は?…オイ!どうなってんだ!?」
「誰にやられた!?」
なんて声が鍛錬場から私の背中に突き刺さる。…彼らは目にしてしまったらしい。猛者であるはずの鍛錬場にいた十一番隊隊士数名がひっくり返ってのびているのだから。…私によって。
「殺り合おうぜ…!!」
「ったい、嫌です!」
「なんだー、なまえりんって強かったんだねぇ」
「草鹿副隊長!違います!」
草鹿副隊長の呑気な声に勢いよく返事を返して、死に物狂いで走りつづける。更木隊長の霊圧で背筋がひやりとする。隊長、思いっきり殺る気ですね…!?見慣れた扉が目の前に迫って思わず扉を蹴破った。
「うおおおお!!?…って、あ?」
「ま、ままま斑目三席!ちょっと失礼します!」
思いっきりのけぞったままの斑目三席を乗り越えて、彼の机の下に身を伏せた。その瞬間、バアンと扉が勢いよく開く。
「た、隊長…と、副隊長?どうしたんです?」
ちらりと机の下の私と目があって思い切り首を振れば、予想がついたらしく、少し呆れた顔をされた。
「ここに誰か来なかったか?」
「つるりん!なまえりん知らない?」
「あー…そういや、隊長。阿散井が久しぶりに手合わせしてぇなって言ってましたよ」
「…ヘェ」
かつかつと靴音が響いて消えていく。扉のバタンと閉まる音。更木隊長と草鹿副隊長が出て行ってくれたらしい。ほっと息をつく。さっきまで切迫していた更木隊長の霊圧がなくなったせいか、若干肩がかるくなった気もする。
「で?「うわ!?」…オイ」
いや、さっきまで切羽詰まりすぎて、過敏になってるんですよなんて言い訳し、びくびくしながら、机の下から這い出した。
「…あ、はは…。すいません!」
「別に構わねえけどよ。…何やらかしたんだ、テメエは」
斑目三席は不思議そうな顔をしていた。そりゃあ、私目立たないように生きてきたしね。隊長に手合わせやろうぜなんて言われることなさそうだし。渋々、事情を説明するため、口を開いた。苦笑いをしながら。
いつものように鍛錬場へ足を運び、斬魄刀を腰に差しなおした。そういえば、最近、始解をしてなかったなあなんてふと思いつく。戦闘より事務だしね。手合わせを他の隊士とするにしても、木刀やら竹刀だし。…当たり前だけど、女にも容赦してくれない。
「えっと…」
わあわあと騒がしい鍛錬場の中で、かしゃんと斬魄刀に手をかける。久しぶりの感触だ。息を吸い込み、静かに瞼を開けた。
「 "走れ、朱鷺鈴(ときすず)" 」
「ぎゃあああ!!」
「ちょ、待っ…!フボォッ!?」
ズババンと音がして周りから煙が上がり、周りにいた数十名が吹き飛んだ。あたりが静まり返る。立っているのは私だけ。
「…え?」
嘘ん!?え、え?朱鷺鈴ってば、今の何!?動揺して、朱鷺鈴に話しかけるも返事はない。どうしようという焦りと困惑と申し訳なさでいっぱいいっぱい。周りに目を向けられずにいた。
「ヘェ…」
びくと肩が思わず反応し、今度は寒気と嫌な予感で頭がいっぱいになる。肩が重くなってきて心臓がつかまれたようなそんな気がした。
「なまえりんって、強かったんだね!よぉし、剣ちゃんと遊ぼうよ!」
「殺り合おうぜ…!」
「…無理っ!!!」
思わず、回れ右して倒れている隊士たちを飛び越え走り出し今に至る。
「…何笑ってんですか」
「ックク、悪ィ悪ィ!…ま、いいんじゃねえか?」
「いや、良くないですよ」
斑目三席が笑いを堪えてるのがばればれで、ちょっとむくれた。それを指摘すれば、災難だったなァなんてまた大笑い。
「テメエも日増しに力増してるってことだろ?」
「そうなんですかね」
「そういうことだろ。まぁ、つまりは、お前も、十一番隊だったってことだろうが。いいってことにしとけよ!」
「…はあ」
私は、十一番隊に馴染んできたらしい。…いつか、事務中心な任務じゃなくなるときがくるんだろうか。十一番隊なんて最初どうしようって思ったけれど、私意外にやっていけるのかも…しれない。
蹴破れ
自分の殻を、その結果
(お茶淹れます)
(おう)
(あの、そういえば、…阿散井先輩は大丈夫なんですかね?)
(あ?あー…大丈夫だろ。ま、あんま、気にすんじゃねえ)
(…いいのかな)
20111215
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mokuji