今日の夕ご飯を買いに来た。もちろん、簡単に作れるやつ。なんでかと言うと、よし作ろうと意気込んでキッチンに立ったら、材料というか調味料とかがないのに気づいて気分が落ち込んだから。…こういう時に限ってないものってよくあるよねなんて言い聞かせる。
簡単に作れるもの、つまりは、レンジでチン!とかそんなやつ。意外に美味しいじゃん。前向きにいこう、私。気にするな。ご飯は炊いたし、たまにはいいよねなんて、うんうん頷きながら、コンビニのドアを押した。が、その手は的がはずれ、空を切る。
ドアが内側から開けられたことに気づくまで、2秒。
「…アホがいた」
思わず口から零れた言葉。
なんでこんな時に。限って。何、運勢最悪なの。
「アホちゃうで。俺には、志摩廉造というええ名前があるんや☆」
「うん、サヨナラ」
面と面を突き合わせて、両者動きを取り戻した。コンビニのドアの前だったことに気付いて慌てて身を翻す。帰ろう、今すぐ。なんで、こいつに会わなきゃいけないんだ。寄りによって。
「ちょ…!なんで逃げるん!?」
「ちょ、離せ…!」
俺、傷つくわ…!と志摩が慌てて私の腕を掴んで引き止める。あーもう!と勢いよく振り返って、文句のひとつでも言ってやろうと口を開きかけたが、その志摩の掴んでいない方の手にあるものに皺を寄せた。
「あんたね…、何買ってんの、堂々と」
「…ん?あー、これ?俺の得意技なんや!」
「あー、うん。このエロ魔人」
「…そのあだ名はマズいなぁ」
「すごく志摩にあってます」
「うわ、何やそれ!…さっぱり嬉しゅうないけど、否定はせえへんよ?」
ですよねなんてふんと鼻を慣らす。志摩の片手にはいつもの雑誌。…私には口に出せないようなピンクの見出しの。もうこの志摩の阿呆らしさ加減というか、ピンクな頭には慣れっこだが、コンビニで会計をするお姉さんの身にもなってほしいよね、まったく。
志摩に何しにきたのか問われて、私はすんなり白状した。まあちょっとは迷ったけれど。もう隠すのも面倒だと思ったから。事情を聞いたとたん、志摩は吹き出した。
…殴っていい?
「…ぷっ!アホや」
「うん、志摩に言われたくないんだけど」
「俺はアホやないよぉ。かっこええ男や」
「あー…ハイハイ」
「俺はくじけへんで!」
「うざい」
「がーん!」
肩を落とした志摩にやれやれと肩をすくめた。かっこええ男ならエロ本買うなよ、馬鹿。…絶対、ほかの女子が見たら引くぞ。…まあ、エロ本買わない志摩とか想像するとキモいけど。
「んじゃね、志摩」
ぽんと肩をたたいて通り過ぎる。まあ、色々、がんばれよ。…色々って何だ。
コンビニ
たまにはいいよね
(あ、これ、おいしそう)
(おっ!期間限定のやつやん!やっぱ、女子は期間限定に弱いんやなぁ)
(…)
(これとかどうなん?今日は冷えるし、鍋とか最適やん)
(…いつまでいるの)
20111108
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mokuji