「あー、ホラ、泣くな泣くな。すぐ見つかるって!な?」


ちょっと苦笑いを浮かべながら、虎徹は小さな頭に軽く手を置いた。ひくりひくりと泣いたまま、動かないその少年を前に、バーナビーがため息をついた。


「あの、僕、帰ってもいいですか?」

「あのな…!お前、ヒーローだろ!ヒーローは市民を助けるためにいるんだろうが!」

「助けるって…。おじさんは大袈裟なんですよ。単なる落とし物でしょう?自分で見つけなきゃ意味がない。それに、彼自身のミスです」

「…うっ。でもよ…!」

「えっと…どうしたんですか、虎さんに兎さん」


というか、いつも2人一緒だし仲良しですねとバーナビーと虎徹に声をかけた。片手にゴミ袋を抱えたままだったが。


「そんなんじゃねえよ。無理やり上司にコンビを「同じ会社に勤めているだけです。それに、僕は、バーナビーです」…いいじゃないの、バニー。あだ名だと思えば。…まあ、そんな感じな」

「どんな感じですか…」


あきれたように息をついた。あだ名だって僕は嫌なんですけどとため息をつかれてしまった。…覚えやすくていいと思うんだけどな。虎さんが私のゴミ袋を見つめているのに気づいて、ああとゴミ袋を掲げて見せる。


「バイト中なんです。そこのファストフードの」

「ああ、なるほどな。頑張ってるじゃねーか」


よしと頭を撫でられる。お父さんみたいだなあ、本当に。

それを兎さんが驚いたように見ていたが、これどうするんですかと額に手を当てた。まだうるうると目を潤ませている小さな男の子。あ、悪いと虎さんが頭をかいた。2人でここに来たときに、その子を発見して、事情を聞くと、クマの大事なぬいぐるみを落としてしまったらしい。


「…それで、一緒に探してたんですか?」

「おう。でも、見つからなくてなぁ…」


困ったぜとお手上げ状態らしい。どんだけ、良い人なんだ、虎さん。苦笑いの虎さんを見上げて、瞬きをする。


「…なんか」

「?」

「虎さん、ヒーローみたいですね」

「…。お、おう!まあな!」

「…おじさん」

「兎さ…バーナビーさんは、本物ですけどね」


まあ、そうですねと兎さんが楽しそうに頷いて、虎さんは微妙な顔をしていた。まだ、目が潤んでいる男の子。うーんとちょっと考える。


「えっと、ちょっと待ってくださいね。…少し、やってみます」

「やってみる?」

「はい」


2人の不思議そうな顔に真顔で頷く。久しぶりだけど、できるかな?手を握って開いてみる。…さあ、始めよう。目を閉じる。そして、身体を包む青白い光。


「「!」」


数羽の鳩がわたしの足元に着地した。どこから来たのか、猫までやってきた。目線に合わせてしゃがみこむ。


「…えーと、うん、クマのぬいぐるみなんだけど。知らないかな?…うん、分かった。…みんな、ありがとね!」


動物たちが一斉に去っていく。あたりが静かになっていて、思わず浮かんだ苦笑いを引っ込めた。


「えっと、何だか、交番に届けられてるみたいですよ?ついさっき」

「え、本当か!よし、じゃあ、行こうぜ!」


その子を抱えて、虎さんが走っていく。そして、振り返りながら、ありがとなと叫ばれてしまった。…そんな大声で言わなくても。


「貴女、NEXTだったんですね」

「あ、ハイ。…あんまり役に立たないので、ヒーローみたいにはなれないんですけど」


その分、バーナビーさんがちょっと羨ましいですと肩をすくめると、まあ、仕事ですからと涼しい顔。遠くで手を振る虎さんが見えた。あ、虎さんが帰ってきた。


「お前がNEXTだったなんてなぁ…とりあえず、今日はありがとな!」


虎さんの笑顔で無事に見つかったということが分かった。うん、良かった。ゴミ袋を抱えなおして、それじゃあと踵を返す。久しぶりに力を使ったためか少しくたびれた。さあ、仕事仕事…!



実は、彼らは
その正体を私はまだ知らない


(ふむ。動物と話せることができるNEXTか…)
(あーら!興味津々って感じねえ!)
(ジョンの話すことも判るのかと思うと、興味もわくってものだろう?)
(…ジョンって何なの?)
(彼の飼い犬よ。ペットよ、ペット)
(それでな…!そいつ、日本人でよ、俺んちの近所に住んでんだよなー)
(にににに日本人!?一度話を…!)
(あ、折紙、そーいや、日本大好きなんだっけ?)
(はい!)


20110923

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mokuji



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