「我愛羅ー」
「…なんだ?」
一言声をかければ、我愛羅は返事を返してくれる。
ばさばさと風が砂埃とともに舞い上がる。ゴミが入らないように、数秒目を閉じた。
彼は優しい。
それをわたしは知ってる。今は、きっとみんなも。
彼は、数週間前、風影になった。
「世界は回ってるんだって」
ぐるぐる、ぐるぐる…。
途方もない時間を。
今までも、これからも。
「…ああ」
「回り続けて疲れたときは、」
「?」
「止まって休んだらいいよ」
我愛羅を見た。
目を瞬かせる。訳が分からないって顔をしてる。
「我愛羅、最近忙しいでしょう」
「…ああ、風影だからな」
「我愛羅もたまには休んでね」
「?」
世界は、回って回って回り続けて、でも、止まるわけにはいかなくて、止まりたくても止まれなくて。
我愛羅に似てると思ったの、ちょっとだけ。
我愛羅、最近、がんばってるから。あの頃よりも。ううん、あの頃からずっとずーっと。
「…すまない」
我愛羅の言葉に首を傾げる。
なんで謝るのかな?
「何を謝ってるのさあ…謝られることされてないよ?」
「…いつも、なまえに心配をかけている」
「それは、謝らなきゃいけないことじゃないよ。我愛羅」
「?」
「それだけ愛されてるってことさ」
赤くなった我愛羅にわたしは微笑んだ。
ぐるぐる回る世界を愛した
20110322
prev | next
mokuji