昨日、ばっちりヒーローに助けられた私は大したけがもなく、即退院できた。有難う、ブルーローズさん。HEROTVは確認していないから、彼女が助けてくれたのかさえ定かじゃないけれど。
「あれ…ええと、虎さん?」
首を傾げる。知り合いがいたような気がする。近所の。その人がひょいと振り返った。隣の人は知らない人だ。
でも見たこと有るような…?
「お、なまえ!虎さんはやめてくれって!虎徹な、虎徹!…まあ、大丈夫だったみたいだな!」
そうだ、虎徹さん。近所のすごく良い人だ。わしと頭を撫でられて、首を傾げた。何の話だろう。
「へ?何がですか?」
「ほら!昨日のだよ、昨日の!」
「昨日?」
えーとと考えれば、昨日の人質事件を思い出した。そうだよ、そりゃあ、犯罪に巻き込まれれば心配もするよね。いくら他人でも。…あれ、でも…
「なんで、虎さんが知ってるんですか?」
「えっ!?…あー、あれだよ」
「あれ?」
「…おじさん」
呆れたような目で隣の人が見た。虎さんが焦ってるのはなぜ?
「うるせえ!」
「あ、HEROTVとかで見てたとか?」
「お、おう!それだよ、それ!」
納得。ちょっと苦笑いをすると、隣の人が誰だか知らないことに気づいた。
「あの、えっと、お隣の方は……」
ばっちり目があった。瞬きをする。どこか驚いている気がするのは気のせいか。やっぱり、どこかで見た顔だ。確か、テレビで。うーん…。
「何か見たこと有るような…?」
「は?おま…!…ま、まさか、バニーちゃん知らねえのか?」
なんで、そこで虎さんがうれしそうなんだ。うきうきしてるのが顔にでてます、存分に。それを嫌そうな目で見ている虎さん曰わくバニーちゃん。
「…大人げないですよ、おじさんのくせに」
「そう拗ねるなって、バニーちゃん!偶にはそんなこともあるもんだぜ?」
「うるさいですよ」
バニーバニーバニーバニー…、兎?そんな訳ないか。何だか申し訳ない。頭をひねる。バー…バニー…
「あ」
「お?思い出したか?」
沈黙。…間違ってたらゴメンナサイ。自信ないや。
「えっと…、ナビーさんでしたっけ?」
「ぶっ!」
「…バーナビーです。バーナビー・ブルックス・Jr」
「バニーちゃんだぜ、つまりは兎ちゃんだな!」
「バニーじゃありません!バーナビーです!」
「…う、兎さん?」
「……。僕、帰ります」
「えええ…!ごめんなさい!」
「…勘違いをしているようですが、僕は忙しいんです。これから取材もありますし…。だから、帰るんです」
あ、さいですか。
帰る兎
泣く子も黙るヒーローらしい
20110923
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mokuji