子供から大人になって気づいたことがある。幼なじみと一緒にいて気づいてしまったこと。それによって生じた感覚は、一言でいうと、骨が喉に刺さったみたい。そんな感覚。ちくちくと痛い。何か言いたいのに出てこない。嫌だとただ思う。イヤホンを耳につっこんで、口をぱくぱくとやっている幼なじみに目を向ける。

…バンドの曲やろか、多分。


「金造て、阿呆やなあ…」

人が悩んどるのになんて口には出さないけれど。

「誰がドアホじゃああああ!」


キリクを構えた金造にちゃうと手を振った。

…本当に短気やなあ、昔から。あと、ひとつつっこむとするなら、イヤホンを両耳にしとるくせに、聞こえんのかい。とりあえず、落ち着いてほしい。


「いや、ドまでは言ってないわ」

「そういう問題とちゃうわ!喧嘩売っとんのか!」

「うん、金造、やる気ださんで。もう勝てんの分かっとるし」


浮かんだのは、苦笑い。

まあ、男女の差なんてそんなもんだ。分かってはいる。この年にもなって、取っ組み合いの喧嘩もないけれど。だが、金造は、手加減することないし。頭に血が上るとすぐだ。


「あん?何、意味分からんこと言ってるん?…もっと分かりやすく言えや!」

うん、そこまでキレなくてもええと思うんやけど。…落ち着いて?そういえば、金造頭悪いんやった。私から頭悪いなんて言われたないと思うけど。

「あー…、簡単に言うとな。所詮、男女の差やっちゅーことや。女の私は男の金造には勝てへんねん」

「ああ、そういうことか」


納得したように金造が頷いた。金造がイヤホンを外す。にいと笑った。


「お前は変わらん」

「は?」


ぱちぱちと瞬きをする。何言ってるんやろか、金造は。


「女や男や言うけどな、お前が女や女言われたって、変わらへんねん。…なんつーか想像つかん」


何をあっけらかんと失礼なことを。この男は。無意識のうちに眉がつり上がる。


「金造。…失礼や。大概にしい。ぶっ飛ばすえ?」


キリクを構えると、ひょいと金造が軽く身を引いた。


「…ほれ。それがお前や。つまり!男や女やなんて関係ないっちゅーことやろ?俺は、これからも負けん!」

「……」

ああ、人が悩んでたのに。なんだ、こいつは。悩んでた私が馬鹿みたいや。

「金造、覚悟しいや!」

「おん、かかってこいや!!」


がきんと鋭い金属音が響き渡った。



骨が喉に刺さったみたいだ
もういいや、君さえいてくれればいい


(このドアホがあああ!!)
(誰がドアホじゃあああ!!)
(お前らはいつも通りやな。…そろそろ夕飯やで)
(このドブス!)
(言うたな!)
(真実や、真実。真実はいつもひとつや!)
(言うたのはこの口かぁあああ!)
(無視するなんていい度胸やないかい!)
(げえ!?)
(うわあ、柔兄!)
(…夕・飯・や)
((…はい))


20110914

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mokuji



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