※学パロ


嫌なことを忘れようとすればするほど、より鮮明に思い出して気持ちが悪くなる。それと、忘れようと頑張っている自分を認めたくないし、おまけにそんな自分に腹も立ってくる。

いっそ、考えることをやめてしまおうと考えたところで、自分が今考えていることに気づく。

自分で言うけど、意味わかんない。



「…な、何、ひとりで百面相してんだよ?」


ちょっと戸惑った声に、意識を相手に向ける。

ああ、そういえば、いたんだ。

肘をついたまますっかり目の前の人物、キバの存在を忘れていた。そうだ、ここは教室だ。みーんみーんと煩い蝉の声。暑いだけの放課後。終わらないプリントをコイツと解いてたんだった。


「なんでもない」


目の前のキバにそれを伝えれば、へえとだけ返される。

キバは所謂、幼なじみってやつだ。家もそこそこ近い。

ふとキバに目を向ければ、キバもこっちを見ているのに気がついた。何よ?斜め上を見ながら(何かわざとらしい)彼の口がおもむろに開いた。


「…で?」

「は?」


…で?って何?

意味が分からない。戸惑ったまま、目を数回瞬かせると、肘を突いたままキバが答える。


「俺、そこまで馬鹿じゃねえぞ」


シカちゃんに頭は負けるけどよぉ。

気にくわないとばかりにキバが肩をすくめた。

なんでそこでシカマルが出てくるんだ。確かに頭いいけどさ。

同じクラスのシカマルの気だるそうな顔が浮かんだ。…今は関係ないからほっとこう。


「何かあったんだろ?言うだけ言ってみりゃあいいじゃねえか」

「なんで、キバに…?」

「…。め、目の前で、んな顔されて構わない程薄情じゃねえよ」

「……」


どんな顔だ。

なんてつっこんだら、真面目に百面相とか言ってきそうだな。キバの視線があちこちに飛び回っているの に気がついた。訝しんで口を開く。


「…キバ?」

「…な、なんだよ?」

「なんか、キバ、可笑しくない?」

「…どこが?」


キバはちょっと目が泳いでいるのに気がついていないらしい。


「分かんないけど、…なんかいつものキバじゃ、ないじゃない」

「…お前だっていつものお前じゃねえじゃん」


ちょっとした沈黙が包む。でも、なんだか嫌な沈黙じゃなかった。なんでだろう。キバと目があった。耳が一番赤いのに気づく。首も少し赤い。キバががしがしと頭をかいた。


「…気にしてくれてんだ、一応」

「…幼なじみだからな、一応」


みーんみーんといつもなら煩いって思うだけの蝉の声。なんだか今日は鬱陶しくない。不思議だった。嫌なことも心の隅で溶けかけてるみたい。すと息を吸う音がした。


「それだけじゃねえよ」

「うん、……うん?」

「……」

「……」

「…やっぱ、馬鹿じゃねえか。お前」

「うるさいな。キバに言われたくないよ」



小さな僕らの小宇宙
分かるのは、君のことだから



PRESENT FOR kai.

遅れてごめんなさい!
おめでとうございます^^
幼なじみ同士のおはなし。

20110725

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mokuji



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