カウントダウン | ナノ



後編(9/10)


 
 
 
 
 
「…ふぅ」


帰り道、ロイは近くのコンビニで暖かいジュースを買って飲みながら歩いていた。今日の出来事を思い返しながら。


(あの時にちゃんと気づいてればあいつはあんな事されなかったのにな)


教科書の件からなんとなくおかしいとは思っていた。だが彼女があまりにも誤魔化そうとしてたから、気づけばロイは気づいてないふりをしてしまったのかもしれない。
そしてスリッパの時にはロイはほぼ確信していた。恐らく誰かが嫌がらせでもしているのだろうと。それでも隠そうとする彼女。そこから既にロイはイライラしていたのだ。何故彼女は隠そうとするのか。


(それから昼か…。その事もあったからつまらない事で怒っちまったんだろうな)


彼女にまた何かあったら、と考えたロイは自分から彼女と彼女の友達を誘った。
自分の為に弁当を作ってくれる彼女。その事は素直に嬉しいとは思っている。後は味さえよければ完璧だとも思うが。今日のは卵焼きが辛かった。塩。塩っぱいどころか最早辛かったのだ。そしてそんな事にロイはカッとなってしまった。今考えれば、その卵焼きは交換されていたか何かだろう。彼女もあんな反応だったのだから。


(…それでつまらない事で怒った事に少し反省してたら急にピーチさんから電話はあるし)

『ロイさん!?大変なの、アイリがっ…!』


ピーチからの電話の内容を聞き、直ぐ様ロイはリンクから行く許可を貰い、バイトから抜け出した。学校に着き、彼女を見つけたら頬は腫れている。許せなかった。彼女にこんな事をした人達と守れなかった、助けられなかった自分自身が。


『私はいいんだってば。それより、ごめんねロイ…!』


意味がわからなかった。自分が傷ついたのに何故謝ってくるのか。だがもうそんな事はどうでもよかった。とにかく彼女を守れなかった。助けられなかった事を謝りたくて。…気づけば抱きしめていた。


(今日の俺は色々とおかしい)


謝るのに抱きしめる必要など無いだろう。そして観覧車。特に話さず終わるつもりだったがいつの間にか自分から話しかけていた。しかも、いつから自分の事を好きになっていたか、だ。ロイは自分自身何を聞いているんだと自分に呆れていた。


『ロイは私の事を守る事、って言ってくれたんだよ』


彼女からそう聞いてロイは思い出した。子供の時からそう決意していた事を。子供の時からそんな決意をしていた自分自身に少し笑いそうになったが。
ロイは彼女の事を守れていないと思っていた。だけど彼女は守ってくれていると言ってくれる。ロイは嬉しかった。
 
 
 
 
 

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