カウントダウン | ナノ



後編(7/10)


 
 
 
 
 
「ごちそうさまでした。美味しかったです」

「いいのよ。またいつでも来てね、ロイ君」

「ありがとうございます」


夜ご飯をご馳走し、外に出るロイを見送るために私も外に出る。冷たい風が吹いていて制服じゃあ少しだけ寒い。


「今日は本当にありがとう」

「俺の方こそな。…そうだ、お前明日の朝暇か?」

「え?うん、暇だよ」

「なら早く起きて明日の文化祭の練習手伝ってほしいんだよ」


えーと、私達のクラスは確か…王子と姫の物語、だっけ。どうしてかと聞くと今まで一回も練習に行ってなかったらしく、流石にやばいと思ったみたい。…ロイって主役の王子だったよね?主役なのに何してんの。


「まあ台詞は頭の中にあるんだがまだ口に出してないからな。だから付き合ってくれたら助かる」

「それはいいんだけどさ…。私起きれないんだけど」

「俺が起こしに行くだろ」


いつも以上に早く起きるのか。…でもまあ、ロイの為って考えたら全然いいけど。それにどんな話とか私も知らないしね。舞台に出る人以外は劇の内容を見れないから。


「…わかった。起こしに来てね」

「ああ。それじゃあ帰るな。頬ちゃんと冷やせよ」

「あっ、待っ「…っと、忘れてた」…へ?」


帰る前に何か愛の言葉でも言おうと思ったのにロイが遮った。背中を向けていたが私に振り返り。


「…あのよ。俺もだから」

「?」

「俺もアイリに助けられてるから。…ありがとな」

「…!」


ロイが優しく笑ってくれる。私は嬉しくて泣きそうになった。ロイを助けれたら。何回思っていたのだろう。なのにロイは私に助けられてるって言ってくれて。少しでも力になれてる事がこんなに嬉しいなんて思ったもなかった。


「…ううん!私こそありがとう!」


私も笑った。精一杯の感謝を込めて。ロイは「ああ」と言うと今度こそ自分の家に向かって歩き始めた。そんなロイに「好きだよー!」なんて大声で言うとスルーされたけど。でもあれは照れているのだと信じたい。


「…お互いに守って、助け合えたらいいな」


ポツリと呟き、私は家へと戻ったのだった。
 
 
 
 
 

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