後編(6/10) 「送ってくれてありがとう。楽しかったよ」 「何言ってんだ。入るぞ」 「え?いやいや何で?」 私の家まで送ってくれて家に入ろうとしたらロイまで一緒に入ろうとしてきた。よくわかんないけど…まあいいか。あ、もしかして。 「夜ご飯食べたいのなら素直に言えばいいじゃん。…いたっ!」 思った事を口に出したらチョップされた。「そんなんじゃない」と呆れたように言われてムッとした。じゃあ何の用があるのよ。 「…まあいいや。ただいまー…って」 玄関を開けて入った瞬間、私の体は凍ったように動かなくなった。理由は…目の前にお父さんがいたから。表情は完全に怒っている。お父さんの後ろでお母さんが「おかえりー」なんて明るい声で言ってるが、何でそんな明るい声出せるの。助けてよ。 「どこに行ってたんだアイリ。しかもロイ君と一緒で」 「い、いやあのね…?これは…」 今が夜じゃなかったらまだ良かったのだと思う。だが今は夜。しかも二人きり。朝の件もあるだろうしお父さんは不機嫌MAX。私はどうにかならないかと頭の中で必死で考える。するとロイが私の肩に手をのせて前に立った。 「すみません。少し借りていました」 「借りていた?こんな遅くまでかい?ではアイリの頬は何故腫れているのかな」 「あ…!」 まだ腫れていたんだ…!あああ、どうしよう。流石にこれは誤魔化せない…! 「…詳しい事情は言えませんが、俺のせいでこうなりました。殴ってくれて構いません」 「ちょ、ロイ…!?」 止めようとしたらロイが首を振って私に笑う。そして覚悟を決めたように目を瞑った。ロイが殴られる…?そんなの…! 「駄目だから!」 「!」 ロイを守ろうと目の前に立つ私を見て驚くお父さん。ロイが殴られる所なんて絶対見たくない。というかさせない。 「アイリ!?何言ってんだ馬鹿!」 「馬鹿はどっちなの!?お父さん、ロイを殴ったら私本気で怒るから!ロイは悪くないし!」 「お前なぁ…!」 「ぷっ…あはははは」 ロイと言い争っていると笑い声が聞こえた。その笑い声とはお父さんだった。口をおさえて私達を見ながら可笑しそうに笑っている。 「まいったな…。君達には負けたよ」 「え?」 「アイリは本当にロイ君の事が好きなんだな」 「そりゃね!大好き!」 恥ずかしがる事もなくさらりと告げる私に聞いてきたお父さんが焦っていた。やがてロイを見ると微笑んで。 「そしてロイ君。君も…」 「………」 「…?」 ロイもじっとお父さんを見ているし、お父さんが言った言葉に首を傾げていると「何でもないよ」とお父さんに微笑まれた。お母さんの「ご飯できたわよー」と言う声が聞こえてきておもわず笑いそうになる。何ていうか…マイペースなお母さんだなぁ。 「さて、食べようか二人とも」 「うん!ロイも、ね」 「俺も?けど…」 「構わないよ。寧ろ母さんも君がいてくれた方が喜ぶから」 「お母さんだけじゃなくて私もね!」 「…ありがとう、ございます…」 とりあえずお父さんが少しでもわかってくれたみたいで良かった…。私達はお母さんの所へ向かい、楽しくご飯を食べたのだった。 [戻る] ×
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