後編(4/10) 「…もうこんな時間か」 それからしばらく抱き合ったままだったが、ロイがそう言って離れた。少しだけ残念と思ってしまう。外を見るともう日が暮れ始めていた。 「帰るぞ。送ってく」 「…うん」 やっぱり帰る、よね。あーあ、今日は全く進展なかったなぁ。明日が最終日だというのに。明日の文化祭どれだけ頑張らないといけないのだろう。 「ブツブツ言いながら歩くな。変な奴だと思われる」 「え、口に出してた!?」 ロイが呆れたようにため息をつく。つまり肯定だ。うわ、聞かれてたのか。いやまあロイだけに聞かれているから全然いいんだけど。 「…そうだ。まだ時間あるか?」 「?うん、あるよ。どうせ帰っても暇だし」 「なら少し付き合えよ」 「え?」 グッと引っ張られたのは私の手。そのままギュッとロイの手に握られる。顔が熱くなった。ちょ、ちょ…!?何で手…! 「何顔赤くしてんだ。時間がないから早く行くぞ」 「行くって何処に!?てか顔赤いのはロイのせいだから!」 私の発言にロイは聞く耳を持たない。とりあえず訳のわからないまま、私はロイに引っ張られながらもついていったのだった。 「…よし、間に合ったな」 ついた所は遊園地だった。今から乗るのかなぁ、なんて呑気に見上げていると「入るぞ」とロイの声が聞こえて引っ張られる。わっ、本気で遊ぶ気? 「すみません、二人で」 お金を渡す為か手が離れる。寂しい気持ちになった。ブンブンと首を横に振り、先に入っていったロイを追いかけるように入る。ロイが真っ先に向かった乗り物は観覧車。人があまりいないし、一番空いているからかな。観覧車の中に入り扉を閉められゆっくりと動き出す。目の前にはロイ。そして二人きり。それだけで私の胸はうるさくなる。 [戻る] ×
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