カウントダウン | ナノ



前編(5/8)


 
 
 
 
 
その授業の途中。私は教科書を開かずにノートを必死で書いていた。授業の半分を寝てしまったからである。教科書を読み上げている男子の声を聞きながらノートを書いていると。


「アイリ。ここから先はお前が読みなさい。寝ていた罰だ」


先生に当てられた。寝てたのやっぱりバレてたかー…なんて思いながら書いていたのを一旦中断して男子が読んでいたページを開ける。私の目に映ったのは―…。


「…すみません。次の時に全文読むので、今回は読まなくてもいいですか?」


私の発言に皆が驚いていた。と言っても男子が圧倒的に多い。先生も不思議に思ったのか私に聞いてくるが、何も答えなかった。仕方が無いよ、"読みたくても読めない"のだから。


「いい加減にしろ。怒らせたいのか?」

「先生。俺が読みます」

「…そうか。なら頼むぞロイ」


ロイに助けられて心の中でお礼を言った。…後で凄い聞かれそうだけど。でも絶対言わないもんね。
もう一度開かれているページを見る。文の上に黒いマジックで大きくあちらこちらに書かれている言葉。『ロイ様から離れろ』『ロイ様は私達のだ』。他にも色々と。…直ぐ来るとは思ってたけど、早かったな。馬鹿みたいだ。こんな事される方がロイは嫌がるのに。










「で?何で読まなかったんだ?」

「そうよ。そんなに眠かったの?」

「い、いや…そういう訳じゃないんだけど…」


授業が終わり、直ぐ様ロイとピーチは私の元へとやって来た。言える訳が無い。こんな事言ったら迷惑になる。


「さ、さあ!次は移動だから、早く行こ!」


話を無理矢理変えて、そのまま私は次の授業の場所へと向かった。ただ、その為には靴をスリッパへと変えなければ無かった。だから私は自分のスリッパが入っているロッカーへと向かうと。


「…は?」

「どうしたの?」


後からピーチがやって来て、立ち止まっている私を見てからロッカーを見る。周りの人達はスリッパがあるのに私のは無い。…また女子達かな。


「…多分他のクラスの子が借りたんだよ」


誤魔化した。ピーチやロイにはこんな事言えないもん。ピーチが「でも無断で…?」と首を傾げているが私は黙ったまま。
 
 
 
 
 

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