カウントダウン | ナノ



前編(4/8)


 
 
 
 
 
「そう言うアイリこそ、ロイさんとはどうなったのよ」

「へ…」


ピーチの突然の質問に間抜けな声が出て、更には顔が赤くなった気がした。昨日の事がふつふつと頭の中に浮かび上がって恥ずかしくなってくる。


「その様子じゃ…何かあったみたいね?」

「な、何もないよ!うん!」


少しニヤけながら聞いてくるピーチにますます顔が赤くなった気がする。ブンブンと手を横に振りながら必死で言っていると。


「…何もないなんてよく言ってくれるな、アイリ」

「ひっ!?」


後ろから冷たい声が聞こえてきて振り返る。そこにいたのはあの大量の女子から逃れてきたロイ。…と言っても、ロイの後ろには女子はいるんだが。そして私を見ているのだが。


「ピーチさん、実は昨日こいつが…「うわー!言わないでー!」また後で言うな」

「ええ、待ってるわ」

「もういいから!ほら先生来たし座ろっ!?」


何この二人怖い。渋々と言った感じでロイは自分の席に戻る。私も自分の席に座った。―――女子が私に何かしようと考えていたなんて知らずに。










「…あれ?」


それは三時間目が始まる前の休み時間の時からだった。机の中を探しても三時間目の授業で使う教科書が無い。今朝はあった筈なのに。鞄の中、ロッカーの中と探しても見つかる気配は無かった。


「アイリ、どうしたの?」

「…教科書が無くなったみたいで…」

「大丈夫?それなら私が授業中見せて―…」

「アイリさん、もしかしてこれじゃない?」


え?と思って私に話しかけてきた一人の女子に振り返った。持っていたのは私の探している教科書。名前は私の名前だった。どうやら廊下に落ちていたらしい。…おかしい。いくらなんでもこの教科書は重いから落としたら音が鳴って気づくはず。それなのに何で…。


「…ありがとう!助かったよ!」

「いえいえ!困った時はお互い様ってやつよ」


考えるのを一旦やめてお礼を言えば、ウインクをしてその子は自分の教室へと戻っていく。同時にチャイムが鳴って再び私は席に戻る。
 
 
 
 
 

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