カウントダウン | ナノ



前編(7/10)


 
 
 
 
 
「私、今日一日働きます!」

「アイリ!」

「ありがとう、助かるよ。早速服を渡すから…」


ロイがどれだけ怒ろうが私は止まらない。私がやれば出来るってとこ見せてやるんだから。そう思いながらキッとロイを見る。だけど。


「…どうなっても知らねぇからな」


冷たく言ってロイはスタッフルームから出ていった。ズキン、と胸が痛んだ。私がここにいるってだけで嫌なのかな…。


「はいこれ」

「ありがとうございます」


服を渡されたので考えを一旦止める。受け取ると私は早速服を広げて自分のサイズに合っているかを確認する。


「…本当に助かったよ、アイリさんには」

「え?」

「実はロイの奴最近疲れているみたいでな。心配して休めって言っても、あいつ頑固だから全然休まないし」


だから少しでもロイの負担を減らす為に私に働かないかと誘ったみたい。それに今日は半額デーだから余計に忙しいみたいだから。…優しい店長さんだな…。


「わかりました。精一杯頑張らせていただきます!」

「頼む。わからない事があればオレに聞いてくれればいいから」

「はい!」


リンク店長が出ていくのを確認して私はバイトの制服を着ようと準備する。ロイのフォローをしなくちゃ、ね。










「う、嘘っ…!?」


着替えて外に出れば私が来た時よりも遥かにお客さんが多くなっていた。混乱しながらも他の店員さんを見るとかなり忙しいそう。ロイを見る。忙しそうだが素早くことを済ませて次のお客さんの所へ行っていた。す、凄い…。


「ちょっとアイリさん」

「はい?…あ」


話しかけてきたのは学校の女子。完全に私を睨んでいる。…多分何でロイと一緒に働いているのかと思っているのだろう。


「…早く他の客の所へ行ったらどう?あそこの人達あなたを呼んでいるわよ」

「あ、ありがとう」


まさかそう言われるとは思ってなくて焦ったが、言ってくれたお客さんの元へ急いで向かった。―――だから女子が笑った事なんて気づかなかった。
 
 
 
 
 

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