カウントダウン | ナノ



前編(6/10)


 
 
 
 
 
「…で?何でここにいるんだよ」


連れてこられた場所はスタッフルーム。今は誰もいない為ロイの声がよく通る。…ロイの怒っている声が。腕を組みながら見てくるロイに私は言う。


「クラスの男子が教えてくれたんだ」

「…やっぱ口止めしとけばよかったか。はぁ…」

「…何で私には教えてくれなかったの?」


他の学校の女子だって私みたいに男子から教えてもらったのかもしれない。でもどうして私だけこうやって注意してくるの?…嫌い、だから?


「お前に教えたらめんどくさいだろ」

「何それ…。私とロイって幼馴染みじゃん。それなのに教えてくれなかったの?」

「別に幼馴染みだからって何でも言わなきゃいけないって事はないだろ」

「…そりゃ、そうだけど…。だったら何で他の女子には言わないわけ?どうして私だけ…」

「…お前にはこんな俺を見てほしくなかったからだ」

「え?」


それってどういう事?そう聞こうと思ったのに、ロイはまた私の腕を掴んで「ここで見た事は忘れて早く帰れ」と言ってスタッフルームから出ていこうとする。でも私はロイの手を振り払った。


「帰らない」

「…いい加減にしろよ、アイリ」

「ロイが働いている所見たいもん」

「お前な…!」

「ははっ、面白い子だな。ロイ」


そこで聞こえたのは一人の男性の声。ロイの後ろに立っていたのは金髪が目立っている男性。その男性は私を見ると微笑んでいた。


「…リンク店長」

「えっ、店長さん!?す、すみません!こんな所にいて、私…!」

「構わないよ。ロイが連れてきたんだろ?」

「すみません」


頭を下げるロイを見てリンク店長は困ったように笑う。もう一度私を見ると口に手をあててポツリと呟く。


「もしかして君は…アイリさん?」

「はい、そうですけど…」

「やっぱりか。君の事はロイからよく聞いてるから」

「ロイから…?」

「余計な事を言わないで下さい、店長」


パッとロイを見てもロイは私を見ない。…どんな話をしていたのだろう。ロイの事だから馬鹿とか言われてたのかな。それはそれで落ち込む。


「…そうだアイリさん。よければ今日一日だけでも働いてくれないか?」

「え!?」

「実は今日は全品半額デーでいつもより人が多くて困っているんだ。だから人手が欲しいんだよ」

「リンク店長、こいつには無理です。こいつに働かせるぐらいなら俺がやります」


ムカッ。そんな言い方しなくてもいいのに。確かに働いたら事はないけど、私だって働こうと思えば出来るのだから。…多分。
 
 
 
 
 

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