カウントダウン | ナノ



前編(3/10)


 
 
 
 
 
「ロイ。一緒に食べよ」


昼休み。今朝の怒りはどこかへ行き、私はロイに近づいてそう誘った。瞬間、女子は私の事を一斉に睨んできた。恐らく昨日の事があったからだろうけど。


「何でお前と食べなきゃいけないんだよ」

「私がロイを好きだから」


包み隠さずニコッと微笑みながら言うと耐えきれなかったのか一人の女子が「ふざけないで!」とリボンを掴んできた。別にふざけてなんかない。私は至って普通だもんね。だから私は振り払いもしない。相手をじっと見るだけだ。


「…お前、ある意味凄いな」

「何が?」

「話を聞きなさいよ!」

「離してやれ」

「は、はい…ロイ様…」


トロンとした目でロイを見ながら離してくれる。立ち上がると「いいぜ」と言って教室を出ていった。私も慌てて出ていく。どうやら屋上に行ってくれるみたい。


「ピーチ!お待たせ!」

「あ…。アイリとロイさん」

「こいつが誘ってきたから」

「ええ、どうぞ座って」


ロイが座ってその隣に私が座る。パッとロイの弁当を見ると男子が食べそうな弁当で中身は焼肉。私は鞄にあった弁当を取り出しロイの方へ差し出す。


「ロイ!今日は私の弁当食べてよ!」

「は?絶対嫌だな。お前料理できなかっただろ」

「いいから!はい!」


ロイに弁当を渡すと嫌々ながらも私が作った弁当を受け取り中身を見る。ふふふ、結構自信作なんだよね。鼻を高くしながら笑っていると。


「…アイリ、これ…」

「ん?一人で作ったから安心して!」


ピーチが心配そうな顔で私を見てきたからそう答える。ロイはというと眉間に皺を寄せながら弁当を置く。え、何?どうしたの?


「こんなぐちゃぐちゃな弁当誰が食べる気になるか!」

「ま、まあ多少ぐちゃぐちゃだけど味は大丈夫だから!ね?」

「自分で食べろ。俺は自分のを食う」

「酷い、なにそれ!」

「少し食べてもいい?」

「え、うん!どう「やめとけピーチさん」…ちょっと!」


弁当に箸を伸ばしてたピーチを止めて私の弁当を取るロイ。「こんな得体の知れないもんをピーチさんに食べさせれるか」と怒られてなんか泣きそうになる。そこまで言わなくてもいいじゃん…。頑張って作ったのに…。


「…おい、泣くなよ」

「泣いてない!」

「…ったく」


ひょいと私の弁当の中身を一口食べるロイ。その事に嬉しくなって涙が止まる。ピーチは…喜んでいたが直ぐにロイの顔を見ていた。


「…まっず。なんだこれ…」

「ロイさん、はいお茶」

「ありがとう」

「も、もういいよ。…一口食べてくれただけで十分」

「何言ってんだ、残したら食材たちが勿体ないだろ」


…そう言ってロイは全部食べてくれた。なんだかんだで優しいんだから。そんなところが好きなんだけどね。因みにピーチには料理の練習をしないとね、と注意されたのだった。
 
 
 
 
 

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