「貴様が街に来てるって情報が組織の方に入ってきてな。まさかとは思ったが念のため手下どもに声をかけておいたのさ。『見つけたら逃がすな』…ってよ」

「組織?」

「"ブルーバイス"。ロイフェンさんを中心に一年程前から街を仕切ってる新しい組織…」


そして自分の新しい飼い主様と。ベヤードさんは言う。それはつまり…まだ闇の世界から足を洗っていないという事だ。サヤさんが忠告してくれた事を無視したんだ、この人は…。


「サヤ君は裏世界に深入りしてもろくな目にあわないと言ったが、やはり後ろ楯があった方が世の中渡って行きやすいもんでねぇ」

「ククク、てめぇは利口だよベヤード。…だが俺らの組織はまだまだデカくなるぜ。お前のおかげでな」


今ここでトレインさんを殺したら闇の世界の富も名声も一度に手に入る。組織の名を世界に示すには絶好の獲物。そう告げるロイフェン。更にはベヤードさんには幹部の席を用意してやると。


「…くく…。トレイン君。言っておくが俺は間違った道を進んだつもりはないよ。現にサヤ君は死に…俺は今もこうして生きてる!」

「!」

「何で知って…」

「くくく、実はとっくに知っていたんだよ…」


現役の掃除屋のリストを調べれば生きてるかどうかぐらいの事はわかるらしい。それでベヤードさんは知ったみたいで。やっぱり私達に初めから嘘をついていたんだ。サヤさんの名前を使う事でトレインさんを呼び出すなんて…!


「まあある程度予想はついてたがなぁ。敵に傷の手当を施すようなバカ女が生きていける程甘い世の中じゃねぇからよぉ」

「そんな言い方…!」

「…確かにな。…あいつはどんな人間にも救う価値があると信じていた…。きっかけさえあれば誰だって変われるってよ。…バカな奴だよな、ホントに…」

「ひゃははは、てめぇの今の状況もかなりマヌケだぜぇ!?よく見…」


私達を囲んでいる一人が全てを言い終わる前にトレインさんがその人の顔を見もせずに殴った。殴られた人は窓を突き抜け外に出される。トレインさんが静かに立ち上がるとカッとなった他の人達が怒りだしたが、一人は殴り、一人は蹴り、肘うち、頭をぶつけたりと一人一人確実に倒していく。


「へっ!やるじゃねぇか黒猫!」

「きゃっ…!?」


ロイフェンに腕を掴まれて無理矢理立たされる。空いている手でバッと取り出した物は針。ただの針では無いと予測して離れる様にもがいたが、相手は男性の為力が強くて適わなかった。


「やっ、はなし…!」

「大人しくしろ!この"毒針のロイフェン"の前ではてめぇなんぞザコ…」


三発銃声が聞こえて弾丸はロイフェンの左右の肩と腹に当たっていた。撃たれた場所から血が溢れて私の顔にロイフェンの血がつく。悲鳴をあげて倒れるのを間近で見る事しか出来ない。撃ったのはトレインさんしかいなかった。


(ウソだろ…。全員…)


ベヤードさんは目の前で起こっている事が信じられないから動けずにいる。私も何がなんだがわからなくて自分の顔に付いている血を拭う事すら出来なかった。でも、ベヤードさんに近づくトレインさんを見て一つわかる事はある。


「…けどよ。あいつがバカなら…てめぇは一体何なんだよ」


尋常じゃないぐらいに怒っている、ということ。殺気が伝わってきて震えたくなくても体が震える。トレインさんがベヤードさんの頭に装飾銃を向ける。


「わ!ま…待ってくれ頼む!撃たねぇでくれ!そんなんで頭撃たれたら死んじゃうだろ!?シャレなんねぇよ」

「ああ…そうだな」


だけど引き金を引いていくトレインさん。それを見てベヤードさんは叫んだ。


「トレインさん!」
 
 
 
 
 


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