「ん…」
うっすらと目を開けると見えるのは天井。寝転んでいる所はきっとベッドだろう。そして…手に何か暖かい感触。何かと思って体を起こした。ユヅキさんのおかげで痛くもなんともない。傷が完全に治っているんだろう。凄いな…。
「…え!?」
体を起こして驚いた。だって…トレインさんが私が寝ていたベットに頭をおいて寝ていたから。それだけじゃない。手に暖かい感触はトレインさんの手だった。握られている。え、ちょっ、待って!?一気に全身が熱くなる。
「…!怪我…」
寝顔を見ると頬に絆創膏がある。…もしかしてデュラムと闘った…のかな。ううう、心配…。
「―――…?」
「あ…」
驚きで騒がしくしていた為か、トレインさんが軽く目を開ける。頭を起こすとあいている手で目をこする。多分まだ完全には起きていないのだろう。
「トレインさん」
「…明…。起き…」
私が彼の名前を呼ぶと私の顔を見る。まだ眠たそうな目と目が合った瞬間、次には目を見開き私の名前を呼んで左手で肩を掴んできた。
「大丈夫なのか!?」
「う、うん…平気だよ。どこも痛くないから」
「そっか、良かった…」
ホッとするトレインさんを見て私は笑う。随分心配してくれたんだと思うと胸が暖かくなった。何故平気なのか、それはユヅキさんのおかげだと説明しなければならない。だけどその前に。
「あ、あの…。手…」
「…っ、わ、悪ぃ!」
改めて手を握られているという事実に顔を熱くなる。私が躊躇いながら言うと、トレインさんが気づき慌てて手を離す。ほ、本当はこのままでも良かったんだけどやっぱり恥ずかしいし…。
「その、あれだ!魘されていたから、こうでもすればと思ってだな…!」
「…そ、そうなんだ。ありがとうトレインさん。でもそこまで必死に言わなくても…」
必死に言うトレインさんがおかしくて笑ってしまう。そんな私に「笑うなよ」と笑いながら言われてますます笑ってしまう。笑いが止まるともうどこも痛くないからベッドから降りる。
「イヴちゃんは大丈夫?」
ずっと気になってた。イヴちゃんはどうなっているのだろうと。どうやら隣の部屋で寝ているみたい。どうやらデュラムにやられてから私達は二日も寝ていたらしい。とりあえずイヴちゃんの部屋に行く事にしよう。
「明」
「ん?」
その前にトレインさんに止められて振り返る。先程とは違い、笑ってなくて真剣な表情。どうしたのかと首を傾げた。
「俺のせいで悪かった」
「え!?あ、謝らないで!?トレインさんのせいじゃないし」
申し訳ないというように暗い表情をする彼に私は焦ってしまう。「…それにね」と続けて言った。
「守ってもらうばかりは嫌だし。トレインさんや他の人が傷つくのは見たくないから」
だから強くならないといけない。私だって…他の人を守れるくらいには。大切な人達を守れるくらいには。
「…んなの俺もだっての。だから」
私の顔を見て、私の目を見て。はっきりトレインさんが言う。
「今度こそ俺は明を守る。お前が傷つくのは見たくないんだよ」
「っ…!」
まるで誓いのような言葉。最後に笑う彼がカッコよくて。全身が熱くなり、顔が一番熱を浴びたように熱いのがわかった。そしてドキドキがとまらなかった。
「あ…あり…がとう…」
それだけ言って私は先にイヴちゃんがいる部屋に向かってしまった。だってこんな顔見せられないよ…!ドキドキがとまらないし…!
「…ほんと、何言ってんだ俺…」
まさかトレインさんが顔を赤くしていて、まるで私と同じ感情だなんて知らない私だった―…。
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