「ありがとうユヅキさん」

「いえ。…ですが危ないところでした。もし一歩遅かったら恐らく…助ける事ができなかったでしょう」


「間に合ってよかったです」と安心して息を吐くユヅキさん。…そっか、助けられたんだ。結局、私は…。ううん、やっぱり甘えていたら駄目だ。


「…あの、ユヅキさん」

「はい。何でしょうか」

「その…三回助けるってやつ無しにしてくれないかな…?」

「え…?」


突然の言葉にユヅキさんはわかっていない。…三回助ける。つまり今回のも合わせて無くしてほしいということ。だってそれは例えば三回私が死んでもまたこうやって生きかえるって事だよね。そんなの…もう本当に人間じゃないみたいだから。


「…今回のも無くす、ということは死ぬかもしれないのですよ」

「わかってる。だけどこれは私が弱いだけだから」


自分が弱くてイヴちゃんを守れなくて。結局一撃くらっただけでほどんど動けなくて。最後の攻撃は自分が勝手に守って結局は死にかけている。…自業自得だよ。


「…シズクさんとユヅキさんには悪いけど…」

「わかりました」


ここで旅はおしまいかもしれない、と言おうと思ったがユヅキさんが先にそう言った。少し悩んだ様子で。


「…助けるのは無しにします」

「!…あ、ありがとう…」

「ですが」


私に近づいてきて人差し指を立てて笑う。


「今回のこれは私のお礼として受け取って下さい」

「…え?おれ、い…?」

「はい。…ここまで私と話してくれた事や笑ってくれた事。そして何より…友達と言ってくれた事。全て含めてのお礼です」


「拒否権は無しですよ」と笑うユヅキさんに泣きそうになる。…どうしてそんなに優しいの?勝手に私が言った事をきいてくれて、しかもお礼だなんて…。


「…ありがとうユヅキさん」

「…いえ。私は最低な奴です。お礼などいりませんよ」

「最低?」

「こんな事を言っていても結局は明さんの旅を終わらせたくないだけですから」


つまり自分にとって大切な何かを探すまでは死なせたくないという事らしい。…そうだね、私もそれを見つけ出すまでは死ねない。シズクさんとの約束を破りたくないから。


「そんなに気にしないで。…約束だもん、しょうがないよ」

「…ありがとうございます。では明さん、私はそろそろ…」

「あ、うん!ほんとにありがとう!」

「お願いですから無茶はしないで下さい」


祈るように言われて私は力強く頷く。今度からはもうユヅキさんは助けないでいてくれる。だから強くならないと。…せめて死なないように。


「また会いに行きます。それでは…頑張って下さいね」

「うん!」


ユヅキさんから放たれる光が眩しくて目を閉じた―…。
 
 
 
 
 


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