「どうだ?フジムラ。二人の容体は」
あの後スヴェンは二人を連れて知り合いの診察所へ。そしてトレインは…デュラムの方へ行った。スヴェンはとりあえずイヴが寝ている部屋にいる。明はかなり出血が酷すぎて違う所で治療しているからだ。フジムラ、という"闇医者"にスヴェンに聞くとフジムラは曇った表情で
「…どうもこうも…。手のほどこしようがないよ」
「!」
そう言った。当然スヴェンともう一人…アネットも驚く。アネットもデュラムにやられていたのだ。手のほどこしようがない。それはつまり…と嫌な方に考えしまう。
「よーく目を凝らしてこの娘の傷口を見てみろ」
「…?」
「普通の病院に担ぎ込んでたらエライ騒ぎになるところだよ」
イヴに近づくスヴェンにフジムラはそう言う。ここは普通ではない。闇の住人などの手当をしている。スヴェンは目を細めてイヴの顔を見る。そして気づいた。傷口が光っていると。
「常人では考えられないスピードで傷口がふさがり始めている。体内のナノマシンが細胞の活動を活性化させているんだ」
この様子なら2日で完治する。そう聞いてスヴェンは安心した。ならある疑問が浮かぶ。
「?じゃあ手のほどこしようがないっつーのは?」
「医者[わたし]にできる事が何もないってコトだよ」
冷めた顔をして言うフジムラにスヴェンは拳骨をお見舞いした。紛らわしい言い方をするな、ということだろう。意識が戻らないのは治癒に専念するためらしい。じきに目が覚めるとのこと。
「…それで、もう一人の方は…?」
「………」
アネットが心配して明の事を聞く。それに対しフジムラは先程とは全く違う表情になった。
「もう一人の方は諦めた方がいいかもしれん」
「なっ…!?」
「何だと!?」
流石にこれは冗談ではないのだろう。悲しそうな表情をしているのだから。出血のしすぎと傷の多さ。それが酷すぎる、というフジムラは言う。
「もう心拍数が弱い。恐らくこのまま…」
「どうすることも出来ねぇのか!?」
「…祈ることしかできないね」
スヴェンとアネットは何も言えなかった。ただただ祈る気持ちでいた。
―――体が重い。深い海の中へ沈んでいくような感覚。この感覚…前にもある。そう、あの時。私が交通事故にあってシズクさんと会う前。あれ…?じゃあ私…また死んだ…の…?
「死んでませんよ」
「!」
突然声が聞こえて手を引っ張られた。そこにいたのは天使の羽を出しているユヅキさん。
「ユヅキさん…何で…」
「忘れましたか?あの時の約束を」
「え?」
「三回は私が護ります」
「あ…!」
そうか。1番最初ユヅキさんと会った時に…言ってた。三回私を助けてくれるって。
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