「よっと」
信号機から軽々と降りてくるトレインさん。スヴェンさんは自分の武器の初披露が上手くいった事に喜びながら中から現れている銃口を戻していた。私は二人に向かってお疲れ様と言って倒れている恐竜を見る。するとトレインさんが横に並んできて。
「どうした?やっぱ怖かったか?」
「あ、ううん。そうじゃなくて…私は何も出来なかったなって」
恐竜を止めるなんてきっと二人も決して多くは無い出来事のはずなのに、しっかりと対応出来て実行出来ている。私はただ逃げている人々を、壊されていく物達を、恐竜を止めている二人を見つめているだけだった。経験の差といえばそうかもしれない。でもその言葉に甘えているだけなのは嫌だった。
せめて自分の身ぐらい守れる様に強くなりたいのに。このままだと守ってもらうばっかりになってしまう。それで誰かが傷ついたらって考えると…怖い。
「明」
「え?…!?」
黙って考え事をしていたら不意に名前を呼ばれる。顔をそちらに向けた途端、頭にトレインさんの拳で本当に軽くだけど叩かれる。全然痛くはなかったが、ただただ突然の事に呆然とする。
「トレインさん…?」
「あんま深く考えるなよ」
「ただの一般人なら逃げる。だが明は俺達と一緒にいたとしても逃げなかった。それだけでも大したものだと思うぞ」
まるで私が今私が何を考えていたのかをわかっていた様に言う二人に私は驚いた。心配してくれたのかな、と思うと嬉しくもなるが申し訳なくもなる。
「ごめんね、気を使わせて」
「別に使ってねーって」
前からそうだったが、私は直ぐに駄目な方に考えるし自虐する所がある。それで皆に迷惑をかける訳にはいかない。気を引き締めないとと自分に叱咤したのだった。
「…おう!文字通り"止めて"やったぜ。命に別状はねぇよ」
それからトレインさんはリンスさんと電話をしていた。…さっきは気にしなかったけど、リンスさんとトレインさんってやっぱりそういう関係じゃないのかな。
「姫っちいるか?」
恐竜の事は警察に任せるらしい。トレインさんも言ってたけど流石に今はもう暴れる事はしないだろうから殺しはしないはず。私達はホテルにて待つイヴちゃんとリンスさんの所へ再び戻るのだった。
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