「ふーむ、ふむふむ。どうしたものかのうー」

「…!?」


いきなり声が聞こえた為驚いて踏み出そうとした足を止めた。気づけば私の隣には毛先は白いがさっぱりした蒼い髪、どう見てもサイズが合ってないダボダボな服、そして四つ葉のクローバーが入っている白い透明のケースをネックレスの様につけている男性がいた。男性は私の視線に気づくと紫の瞳で見てきた。しかもまじまじと。


「ほうほう。成程ねぇー」

「えっ、と…?あの…?」


ずっと見られるのは流石に恥ずかしい。私今こんなに見られる程変な服を着ているつもりはないのだけど。逃げたいけど逃げたら逃げたでこの人なんだか追ってきそうだし…。


「失礼だのう。お前はワシを何だと思っている。ストーカーじゃないんだが?」

「…えっ…な、何で…」

「思った事がわかったのかと?簡単じゃ、ワシは天才だからのう」


…答えになってない。天才だったら誰でも人の考えや思ってる事がわかるはずがない。しかもこの人若いと思うのに自分の事をワシって言うんだ。…違う違う、この人ペースに巻き込まれてる気がする。
ドヤ顔で言ってきた男性は再び私を見てくる。


「しっかし…確かに似ている」

「似ている?」

「まあ向こうの方が色気があるがのう。胸とか」

「むっ…!?」


男性の発言に思わず荷物を持っていない手で体を隠した。しょ…初対面の人に少し気にしてる事を言われた…!ま、まだ15だから成長中のはずだし!
無理にそうだと思い込むが軽く泣きそうになっている私なんて全く気にしないで男性は更に「何を隠す必要がある」と追い討ちを掛けてくる。


「失礼します!」

「こら待たんか」


この人の傍にいると精神面をやられるとなんとなく悟り離れようとするが男性は私の腕を掴んだ。しかも今度は真剣な表情で見てくるからおもわず足を止めてしまう。一体何を言われるのだろう。身構えてしまう。


「すまんが頼みがあって…。ワシにこれを買ってくれんか?」

「え?」


しかし次には表情が緩くなり、無邪気な笑顔で男性は私に手に持っているリンゴを見せてきたのだった。










店から出て少し離れた場所にあるベンチに座る。先程の男性と一緒に。男性は私が買ったリンゴを持ちながら嬉しそうに私にお礼を言う。何でも、この人はお金を持っていなかったのだがずっとリンゴを食べたくて仕方がなかったらしい。


「にしてもお前は優しいな。奢ってもらって言うのもあれだが、その優しさは危ういぞ」

「はい、充分にわかっています。ただ…」


何故かこの人が気になって放っておけないという感情になっている。理由はわからない。でも…この人は私の事を知っている。先程の態度からしてなんとなくわかる。どうして知っているのかを訊きたい。
私が問いかける前に男性はリンゴを一口食べて飲み込んだ後、口を開いた。


「ワシが気になる、ねぇー…」

「ま、また何で…!というかそこを強調しないでもらえます!?」


再び言われた言葉に私はどうしようと考える。初対面の人が気になるなんて絶対変だと思われてる。…このままだと話が進まない気がする。完全に相手のペースになっているのを感じ、困っていると男性は自分の顎に手を添えてニヤリと笑った。


「まさか、ワシに惚れたか?」

「!?…ち、違いますよ!気になるっていうのはそういう意味じゃなくて!」

「隠すな隠すな!」


楽しそうに騒ぐ男性とは反対に私は否定するのに精一杯。この人からは私が一目惚れしたって思われているのかな。だったらきちんと言わないと。
 
 
 
 
 


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