「シズク様。私は明さんの事を最後まで見守り、支えます。それは自分の使命でもありますが、何よりも…シズク様の為に」


決意したユヅキの表情にシズクは一瞬驚いたが直ぐに笑った。ありがとうという意味を込めて。
ユヅキから目を逸らすと今度はため息をつくシズク。それはユヅキではなく、自身に向けられたため息だった。


「後は明が自分にとって大切な何かに気づくだけなんだけど…」

「あの様子ならまだ時間がかかるのでは?」

「そうなのよ。本当に鈍感だわ…」


前にもシズクは明本人に『後は気づくだけ』と告げたがまだ気づいていなかった。ただ薄々気づき始めているだけ。


「それからトレイン君はいつになったらあの子に対する気持ちに気づくのかしら。まったくお互いに鈍いんだから」

「確かに…。正直もどかしいです」

「あら、ユヅキもあの二人の恋を気にしているの?」


今まで二人を見て反応を楽しんではいたが、基本的に色恋沙汰に興味がなかったユヅキがそう言うのは中々珍しい事だった。シズクがユヅキに聞けばユヅキは「まあ…」と答える。


「私は明さんに幸せになってもらいたいので。あいつはどうでもいいですが」

「はいはい。トレイン君にも幸せになってほしいくせに」

「ち、違いますよ!私はっ…!」


楽しそうにシズクが話すとユヅキは焦る。しかしシズクはお構いなしにユヅキをからかう。落ち着きを取り戻す為か、一つ咳払いをするとユヅキはまた真面目な顔に戻る。


「…シズク様。もう一つお聞きしてもよろしいでしょうか」

「改まって何かしら?」

「明さんが自分にとって大切な何かに気づいたらどうなさるおつもりですか?」


この場に連れてくるのはわかっていたが、具体的には聞いていなかったユヅキは尋ねた。途端にシズクの表情が変わった。辛いような、言いたくないような表情になる。そんなシズクの顔を見るのは初めてな為、ユヅキは戸惑う。


「すみません、やはりこの話は」

「いいわ」


聞かないでおきます、と言おうとしたがシズクは静かに言った。目を伏せると再びユヅキを見る。


「いつまでも逃げる訳にはいかないものね」

「シズク様…?」


ユヅキの前に立つと悲しそうな表情で自分の手でユヅキの頬に触れるシズク。ユヅキは訳がわからなかった。唯一わかるのは…何故か聞かなければよかったと後悔している自分がいる事で。


「あなたにとっては辛い事かもしれない。でも憎むのなら私を憎んで」

(憎む?何故シズク様を…?)

「もしあの子が気づいたら…ユヅキは…」















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