「…駄目だわ。どうしても繋がらないわね…」


真っ白な世界、白と反対の黒髪の腰ぐらいまで伸びているストレートな髪が特徴な女性…シズクは一人モニターの前にある機械を弄っていた。それもこれも彼女の親友がどうなっているかを観るために。だが何度やっても彼女がいる所へは繋がらず、モニターは黒い画面のまま。
本来自分が望む場所を何処でも映すモニター。いつもこれで明の様子等を見ているシズクだが、司や星の使徒の動きを見る事は何をやっても許されない。考えれるのは誰かが妨害しているしかない。誰かーーーその人物にシズクは心当たりがあった。


「シズク様。少しよろしいでしょうか」


口元に手を当て悩む中、不意に少年の声がシズクの耳に聞こえてきた。そちらに目を向ける。水色の髪、水色の瞳。少年…ユヅキの姿を見てシズクは頷く。許可をいただいた事に一度頭を下げるユヅキ。


「お聞きしたかったのですが…何故トレイン=ハートネット達にあのような言葉を言ったのですか?」


あのような言葉。トレインとリバーが決闘をし、決着がついた後に別れる時に言った、"トレイン達と会うのはこれが最初で最後"という言葉。その言葉がユヅキには引っかかっていた。
単純にシズクが降りる事を禁止されているからそれを守る為に最初で最後と告げたのならいい。だがそうではないとユヅキはわかっていた。もし自分が考えている通りならば。


「…シズク様。あなたは、私の為に…」


言いかけた言葉はシズクに当てられた人差し指によって続かない。驚くユヅキにシズクは笑い、指をユヅキの口から離す。


「相変わらず鋭いわね。ユヅキの考えている事は当たりよ」

「やはり…!」

「でも自分を責めないでちょうだい。これは私がしたくてあの人に言った事だから」


シズクが口にするあの人とは誰かわからなくてユヅキは訊く。ユヅキは会った事がない事を思い出したシズクはやがて口にする。"大天使様"だと。シズクが『様』と付けるぐらいなのだからシズクよりも上の人だと理解するユヅキ。


「あの人は本当に難しい性格なの。でもこの前なんて明達の事ばかり観てないで他の天使の手伝いをしなさい、なんて言ってきたのよ?」


それは普通の事なのでは、と言いかけた言葉を呑む。基本的にシズクは明を観る事ばかりして一日を過ごしている。ユヅキよりも上の(シズクも含まれる)天使は魂を善か悪かを見分けなければならないのにだ。
一方シズク達よりも下の天使は亡くなった魂をこの世界に運ぶという仕事をしている。ユヅキは特別でほぼ地上にいて人間を見ている。これも仕事だ。


「…答えて下さい、シズク様。何故そうまでして私を天使にしたのですか。…何故、こんな私を救ったのですか…!」


少し明るくなった雰囲気から、再び元に戻される。ユヅキから放たれる言葉が段々と弱々しくなっていく。シズクは優しく微笑んで。


「…あの子の為、って思ってたんだけど…。私はあなたにも司にも生きていてほしかったの」

「シズク様…。ですが明さんにはどう説明なさるつもりですか?」

「大丈夫よ、あの子ならきっとわかってくれると信じてるもの」


本気で信じていると言っている表情が何よりの証拠だ。ユヅキは一度目を伏せると息を吐いて再びシズクを見た。
 
 
 
 
 


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