「あんた何者よ!?」
「…喧しい女だな。耳が潰れるだろう」
「何ですってぇ!?」
「落ち着けリンス。俺達の知り合いだ。…だがユヅキ、何故ここに来たんだ?明ならいないぞ」
初対面のユヅキに対しても相変わらずの態度で言うリンスにユヅキは目を細めて冷たく返す。ユヅキは答える気はなかった。
今にも怒りが噴出しそうな(と言うよりもほぼしている)リンスを止めユヅキに訊く。スヴェンの後ろで自分を睨むリンスを一度冷ややかな目で見てから腕を組み、スヴェンを見る。
「明さんがいないのはわかっている。が、貴様に何かあったら明さん達が悲しむだろう。だからここへ来て治したまでだ。私の勝手な行動だ、礼を言われる必要はない」
「…そうか」
スヴェンはもう一度リンスに照準合わせをするように言う。二人で話したい事があるのだと察したリンスは渋々ながらも軽くユヅキをチラチラ見ながら轟天へと歩いて行った。
「…変な事を聞くが、何かあったのか?」
「何?」
「明が言っていた」
『ユヅキさんは時々…本当に時々だけど、何処か遠い目をして、…寂しい表情をして話す時があるの。もしかしたら何かあったのかなって思って…』
まさか自分がそんな感情を出しているとは思っていなかったユヅキは驚く。同時に申し訳ないと思うユヅキ。心配させているなど知らなかったが、それでも心配はさせたくなかったからだ。
「…私の事は放っておけばいい。自分の事に集中しておけ」
まるで聞くなというように目を伏せ顔を背けるユヅキ。何か言おうとしたスヴェンだったが言えなかった。本人は気づいていないかもしれないが、手をきつく握っている。微かに震えているのもわかる。
(…やはり何かあったんだな。深くは訊くべきではないか)
訊くのならば、それは自分ではなく…明だろう。そう考えスヴェンは轟天の前へと歩いていく。ユヅキは木に背中を預けて空を見る。
「…助ける事ができない"俺"は…何でここにいるんだろう…」
悔しそうに、どこか悲しそうに呟き、今にも泣きそうな顔で笑う。頭に思い浮かぶのは、自分にとって大切なーーー。
nextstory…
[prev] [next]
[back]