一方、明達と別れたスヴェンはリンスを連れて特訓していた。重さ2キロの鉄球を時速180キロで発射できる自身が作り出した"轟天"で。一体何に使うのかと言うと、照準を自分にし、自分に放たれる鉄球[タマ]を予見眼[ヴィジョン・アイ]を使って紙一重でかわし続ける為に使うのだ。何球まで予見眼を連続使用し続ける事ができるか。耐久勝負とも言えるだろう。


『予見眼を完璧に使いこなし、星の使徒の連中と互角に渡り合うためには生温い特訓をしてちゃ駄目って事だ』


リンスにそう言い、早速始めたスヴェン。スヴェンは今までエネルギー消費が激しい為、予見眼の使用を極力控えていた。だからなのか、能力が弱まっている事に気づいていなかった。前にエキドナの道でクリードと闘う事になった時も、その事に気づいていなくやられてしまったのだ。


(今何より必要なのは予見眼によるエネルギー消費に"慣れる"事!それが予見眼の本来の力を引き出す事につながるはず…!ロイド…力を貸してくれ…!)


―――ロイド=ゴールドウィン。元スヴェンの相棒で、予見眼の使い手であった男性。彼はもう既に亡くなっているが彼の予見眼をスヴェンは譲り受けている。
何発も自分に放たれる鉄球を紙一重で全てかわしていく。それを何回繰り返したのだろう。だがやはり長くは続かなく、62発目である鉄球がスヴェンの右肩に当たった。右肩が悲鳴を上げ地面に倒れるスヴェン。


「ちょっと!生きてる!?」

「く…くそっ。62発で打ち止めか…!」

「昨日は50発が限界だったんだから上出来じゃない」

「…駄目だ!せめて…20分は連続で予見眼を発動できるぐらい慣れねぇと…。今のままじゃ10分かそこらが限界だ…!」


よろめきながら立ち上がりもう一度照準合わせを頼むとお願いするスヴェン。休んだ方がいいのではと聞いてもスヴェンはやめる気などさらさらない。リンスは問う。何故そこまでするのかと。


「相棒が過去と決着をつけるための闘いで足手まといになるのはごめんだからな…」

「………」

「…スヴェン」


突如聞こえた自分達とは違う声にスヴェンが振り向く。リンスの隣には水色髪と瞳が特徴の彼ーーーユヅキがいた。気配もなく隣に見知らぬ人がいる事に対し、リンスは驚きながらユヅキから距離をとる。


「ユヅキ…お前なんで…」

「だ、誰よ?知り合い?」


混乱している二人にユヅキは何も答えないで一歩ずつスヴェンに近づいていく。そしてスヴェンの右肩に少し触れると目を閉じた。淡い光がユヅキの手から放たれる。状況についていけない二人は何も言えない。やがて消えるとユヅキは目を開き口を開いた。


「どうだ」

「…痛みが、消えた…?」

「えっ!?」


試しに右肩を回すスヴェン。少しも痛いという表情は見えない。ユヅキもそれを見て「ならいい」と短く言う。先程の光の影響でこうなったのは明白。ユヅキが治してくれたのだとわかったスヴェンはユヅキにお礼を言った。だがリンスだけは訳がわからない為ユヅキに問いかける。
 
 
 
 
 


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