ゲーム機が売っている店に行き、まずは値段を見る。…想像するよりも高くて驚く。一番安くてもここまでするんだ。自分の財布の中を見る。トレインさんとイヴちゃんから少し頂いたお金と自分のを合わせてギリギリと言った所か。元の世界でもこんなにしたのかな。自分で買った事ないからわからないけど。
「これが無いとディスクを起動できないし、早く買おう」
とにかく安くても起動出来ればいい話だから、ゲーム機が入った箱を持っていき購入する。箱に入っているとはいえ帰る時はぶつけないようにしないと。お金を払い袋を持ちながら店を出た。
恐らく二人の方が早く戻っている気がするから、なるべく早く帰らないとと思った私は普段歩くよりもスピードを上げて歩く。…それがいけなかったのか、道の横からこちらへ来た男性とぶつかってしまった。何とかゲーム機の箱の袋に力を込めた事で落とす事はなく、それについては安堵する。
「気をつけろよこのガキ!」
「ご、ごめんなさい!」
男性に怒られてしまい、慌てて頭を下げる。が、それだけでは許せなかったのか私の胸倉を掴んできて。驚く私に男性は今にも怒りが溢れそうな表情をしていた。他の人達は見て見ぬふりをしていた。多分巻き込まれたくないからだろう。
「や、離して下さ…!」
掴んでいない手が私を殴ろうとしたのが見えた。この状況で避けるなんて出来るわけがなくて、せめて迫り来る痛みに耐えようときつく目を瞑る。
…しかしいつまで経っても痛みは来ない。何事かと思って少し目を開けると。
「…何だてめぇは!?」
「…トレイン、さ…」
ーーートレインさんが、男性の手を掴んでいた。どうしてここにいるのかと驚いて目を見開く。それと同時に安心してしまう自分がいて。
一向に手を離す気がない彼に離せと訴える男性を見てトレインさんが相手に笑った。でも。
「明から手を離せよ」
聞こえてきた声は明らかにいつもより低い。もしかして、怒ってくれてるの…?
トレインさんから放たれる殺気に男性は怖気ずくが、私から手を離す所かもっと強く掴んでくる。それが少しだけ痛くて顔を歪める。
「こいつがぶつかってきたのが悪いんだ!さっさと離せ!」
「そうかよ」
「ああ、そうーーーぶっ!?」
言い終わる前にトレインさんの拳が男性の顔に命中した。鼻血を出しながら倒れる。必然的に私からも手が離れた。
「…助けてくれて、ありがとう」
何とか震える手を誤魔化すように笑う。するとトレインさんは何も言わずに私が持っているゲーム機が入っている袋を持ってしまった。そのまま歩いていくから私も慌てて追いかけようとしたが、一度だけ殴られた男性に振り返り「ごめんなさい」と言い、今度こそトレインさんの隣に並んだ。
…並んだ、のはいいが何も話さない。重い空気が流れているのがわかる。
「…あの、やっぱり私が持とうか…?」
それを破ろうと思って話しかけた。でも何も答えてくれなくて。…迷惑な事したし、帰るのが遅かったから怒っているのかな…。
段々歩くにつれて人も少なくなってくる。証拠に周りも静かになってくれば、トレインさんが立ち止まった。私も立ち止まる。…止まったのならちゃんと向き合って謝りたい。そう思っていれば。
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