「…よし。ちゃんとついたな」

「えっ?」


トレインさんの手が離れると金属音が聞こえた。その音の正体は私の手首に星のモチーフがあるブレスレットがついていたからだった。訳が分からずトレインさんの顔を見る。


「思った通り明に似合ってるぜ」

「ト、トレインさん…これは…?」

「俺が小さくなってた時にさ、俺と明で出かけただろ?」


私がデートしたい(お出かけって言い直したけど)って言って、トレインさんに服を着させたり、ワンピースを買ったりしたあの日の事だよね。その後私達はキョーコさんと会って…秘密結社の人達から追われて。それから私はトレインさんより先にスヴェンさん達の所に戻った。


「あの後少しブラブラ寄り道しながら…と言うより、キョウコに付き合わされて色々店に行ったんだけどよ」

「そ、そうだったんだ…」

「その時にこのブレスレットを見つけてさ。何でか明に渡したいって思ったんだよな。んで、買った」


ホントにトレインさんは何でだろうという表情をしていた。買ったのは良いが渡すタイミングがわからなくてずっと渡すタイミングを伺っていたらしい。確かにあの後ゆっくり話せる時はなかった。ギクシャクしていた時もあったし。


「明は両親から貰ったブレスレットを司に斬られただろ?」

「…うん」


思い出すだけでも辛い事。あれ以来時々自分の右手の手首を見て無いんだなと実感させられて何度も泣きたくなった。両親と唯一の繋がりを感じていたブレスレットだったから。


「ホントはそれに似た物を渡せば良かったんだけどな。代わりにならねーかもだけど、受け取ってくれるか?」

「…代わりなんて、思えないよ…」

「…明?」

「両親から貰ったブレスレットはあれだけだから。…もう絶対叶う事なんてないけど、もう一度両親が私に渡さない限り代わりなんてない。だからこれは代わりじゃなくて、トレインさんが私にくれた大切な物だよ」


両親が私の事を想って選び、渡してくれたブレスレットはあれだけ。代わりなんてないし、寧ろトレインさんが渡してくれたこのブレスレットを代わりなんて思いたくなかった。私の事を考えて渡してくれた唯一の物。
ブレスレットに向けていた目をトレインさんへと移す。感情が込み上げてきて、涙が頬を伝う。


「…っ…ありがとう…。…大切に、するね」


ブレスレットに触れて涙を流しながら精一杯の笑顔を彼に向けてお礼を言った。両親から貰った物の様に、自分の手からもう失わせない事を心に誓う。
相変わらず直ぐに溢れる涙を拭おうと指で自分の涙を拭いた時だった。


「…明」

「…え…?」


名前を呼ばれて腕を引っ張られる。突然の事に動かされた体は前に出てトレインさんの腕の中に抱きしめられた。理解した途端、顔が一気に熱くなり涙が止まる。胸が大きく高鳴って彼に聞こえるのではと思ってしまう。


「突然悪い。…けどもう少しだけ、このままでいいか?」


トレインさんの声が近く感じて余計にドキドキする。小さく頷くと少しだけ私を抱きしめるトレインさんの腕が強くなった。昨日煙の中助けてくれた時に抱きしめられた時もドキドキしていたが、今は昨日以上に鼓動が速かった。きっとトレインさんには伝わってしまっているだろう。恥ずかしい。でもこのままでいたい。
…そう思うのはトレインさんにだけだと断言出来る。今なら、わかる気がした。昨日の夜小さいトレインさんを背中から抱きしめたあの時、無意識に私は何を言おうとしたのか。


『…私ね…。トレインさんの事が…』

「…好き…」


言葉と共にトレインさんの背中へ腕を回す。ーーーあなたが、好き。そう思いながら。















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