『クリード…!てめぇ…どういうつもりだ!?』

『ふふ…早かったねぇトレイン…。君が怒る理由はわかるよ。だが誤解しないでくれ。全て君を救う為にやっている事なんだ』

『救う…?』


クリードは立ち上がり言う。サヤはトレインを堕落させようとしている魔女だと。そしてトレインは騙されている事に気づいていない。だから自分が君を救う為にこうしたのだと笑いながら説明するクリードにトレインはもう一度先程と同じ様に頬を殴る。
理解できなかった。勝手に自分がそう決めつけ、頼んでもいない事をした彼の事を理解したくもなかった。
クリードは今のトレインに説明しても無駄かと屋根の上に飛ぶ。


『どうせその女は助からない。その女が死ねばやがて君の目も覚めるだろう。そして気づく。正しいのはこの僕だったという事にね…』

『!逃がすか!』


本来なら装飾銃で撃つ事が出来るはずなのに、装飾銃は現在秘密結社に取り上げられている。立ち去ろうとしたクリードを止める為には追いかけるしかない。そう判断したトレインは直ぐに追おうと足を動かそうとした。が、後ろから自分のコートを引っ張られて足が止まる。
サヤが振り絞った力でトレインを引き止めていたのだ。
地面に流れている血を見てトレインはクリードを追うのをやめ、体をサヤの方へと向ける。地面に膝をつけてサヤの体を支えた。


『話…あるんだ…。聞いてくれる?』

『馬鹿、喋るな!じっとしてろ!直ぐ医者に連れてってやっから…』


止めようとするトレインに構いもせずにサヤは話そうとする。時間が無い事は自分が充分にわかっていた。だからこそトレインに聞いてほしかったのだ。
この街を拠点に掃除屋の仕事をし始めて随分経っていた為、もうじき引っ越すつもりでいたとサヤは告げる。


『トレイン君も笑えるようになってきた…。この街に思い残す事はもうなんにも無いと思って…さ』

『サヤ…』

『私…トレイン君と会えて…良かったよ。色んな所へ行って…。色んな人と知り合ったけど…。親友だと思えたのは…君だけかも』


サヤの目から涙が溢れる。その表情にトレインは驚いたまま、何も言えなかった。サヤ自身も何故自分が泣いているのかわからず変だなと自分に笑う。


『トレイン君…。…私の事は…忘れて…いいから』

『な…何言って…』


忘れる事など出来るはずない。トレインが何故と自分を見つめてくるが、もう口を動かす事すら出来ない。意識が遠のくのを感じながら、サヤは最期に彼に笑った。そして静かに目を閉じ、息を引き取った。
ーーー夜空には、大量の花火が咲いていた。










その後、クリードは行方をくらまし…いくら探しても見つける事は出来なかった。


『裏切り者は処刑される…。それが秘密結社の掟なんだよな』


トレインは秘密結社から装飾銃を奪い、秘密結社を抜けたのだった。
 
 
 
 
 


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