夜空に咲く花火がクリードを照らす。その顔と剣には自分ではない血がついていた。満足気に笑いながら足元で倒れている魔女ーーーサヤを見る。彼女が倒れている所には既に血溜まりが出来ていた。指一つ動かさないのを見て致命傷だと悟り、更に口角を上げるクリード。


『ククク…限りなく愚かだねぇ…。子供なんかに気を取られるとは…』


その時、後ろから怯える声が耳に入る。先程サヤが来ない様に注意しようとした三人の子供だった。彼らは自分達の目の前で起きている光景に恐れ、体すら動かせずにクリードを見ていた。その声と視線を鬱陶しく思いながらクリードは子供達へと体を向け歩いていく。


『…君達も悪い子だ。こんな時間に子供だけで出歩いて。お仕置きしなきゃねぇ…!』

『ひ…』

(やっばい…。このままじゃあの子達が…。…駄目だ…指一本動かせない…。感覚も無いし…この傷…深い…。死…ぬ…)


殺される、そう感じた子供達はただ怯えた表情で近づいてくるクリードを見ていた。それをサヤはボヤける視界で見ていた。今あの子供達を助けられるのは自分しかいない。なんとかしなければと思うが、体は言うことを効かない。段々意識が遠のき、目を閉じたーーーが、直ぐに目を開けて意識を保つ為に体に力を込める。
直感でわかっていた。今ここでクリードを捕まえなければ、彼はいつか世界中の人達にどんでもない不幸をもたらすと。動けと自分の体に命令し、手元から離れた銃に手を伸ばす。やっとの事で掴んだ銃を直ぐに子供達へ振り落とそうとしている剣へ照準を合わせた。


『!』


撃った弾丸がクリードの剣の刃を砕く。折れた刃が地面に突き刺さるのを見てクリードは自分の真後ろから放たれた事に目を見開きながらサヤの方へ振り向いた。


『逃げなさい!…早くっ!』


チャンスは今しかない。サヤが子供達に叫べば子供達は背中を向けて必死で走った。追おうとしないクリードを見て一先ず子供達の安全は確保出来た事にサヤは安心する。
まさかまだ銃を撃つ気力があるとはと呟きながらクリードは地面に刺さっている刃を素手で掴み引き抜いた。


『その傷なら放っていても死ぬだろうけど…念を押して心臓を貫いておくとしようか…』

『く…』

『くく…もう引き金[トリガー]を引く元気もないようだねぇ。かわいそーに…。さあ、楽になりたまえ』


正面に立ったクリードに銃口を向ける力は既にない。それでも自分の銃から手を離す行為は絶対にしなかった。最後まで諦める事はしないとサヤはクリードを睨む。
不敵に笑ったクリードが刃を振り落とそうとした瞬間ーーー横から誰かクリードの頬を殴った。避けきれずに地面に倒れるクリード。サヤの目に映ったのは…息を切らしているトレインだった。
 
 
 
 
 


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