「ヤレヤレ…。キョウコさん。そろそろ宿に戻りマスよ」

「えー。もう帰るんですかぁ?あ、そーだ!じゃあクロ様ケータイ番号教えて下さいよ!あとメルアドも!」

「断る!」

「そーよ、教える必要ないわっ!」


断ってくれた事に胸を撫で下ろしていると、スッとイヴちゃんが出してきたのは白い紙。それにはキョーコさんが求めているトレインさんの携帯番号、そしてメルアドが書かれていた。


「イ…イヴちゃん…」

「ごめんね明。だけどちゃんと教えるまできっとあの人帰らないから…」

「俺に謝れよ!?」


正論かもしれない。受け取ったキョーコさんはというと嬉しさの余りイヴちゃんの後ろで踊っており、立ち止まるとトレインさんの携帯へ直ぐに電話をかける。自分の携帯が鳴っている事にトレインさんはため息をついていた。


「じゃあクロ様。また連絡しますねぇー!」

「いらねぇよ!」


そう言い残しキョーコさんとシャルデンさんは去っていった。…と、同時に先程のモヤモヤや痛みは何処かへ行ってしまったのか無くなった。…どうして?


「何で明は泣きそうだったんだよ?」

「…わ、わかんない」

「わかんないって…」


改めて訊いてこられても自分自身わかっていない為、返答に困ってしまう。…呆れられてもしょうがないよね。だって理由もわからないのにトレインさんとキョーコさんを見ていただけで泣きそうになるなんて。
とにかく謝るとトレインさんは「気にすんなよ」と笑ってくれて安心する。


「…トレイン。あんたニブすぎ」

「はぁ?」

「後明も」

「私も…?」


が、突然リンスさんにそう言われて私達はわからなくて首を傾げる。鈍いって前にも言われたし…何でこんなにも色んな人に鈍いって言われるのかな?


「明。誤解しない様に言っとくけど、トレインの事はなんとも思ってないから。寧ろ私は明を応援してるわ」

「お、応援…?」


…なんとも思ってないって…あ、もしかしてさっきキョーコさんが嫉妬だと言われた事に対して否定してるのかな。だとしても私を応援してるって何…?


「大変だろ」

「まだ気づいてもないんでしょ?」

「うん。それでもね、凄く仲が良くて…」


最終的に私達をスルーして話しだす三人。どうして気づかないとかここまで言ってるのにとかなんか色々言っているのが聞こえてくる。一体何を話しているのか気になるが、トレインさんにも気になった事がある為訊く。


「…あのね、トレインさん」

「…ん?」

「トレインさんってキョーコさんの事…好きなの?」

「んな訳ねぇだろ!?何でそうなる!」


確かにキョーコさんから告白してるから一方的に見えるかもしれないけど、トレインさんがどう思っているかなんてわからない。だから訊いたのだが、直ぐに否定されてしまった。表情からも本心だとわかり安心する。…安心する理由は全然わからないけど。


「…大体俺は…」

「…え?」

「…いや、何でもねぇ…」


じっと見られたと思ったらはぐらかすトレインさんに私はどうしたのかと首を傾げてしまう。だがトレインさんはそれ以上話はしなかった。


(明を見て、何を言おうとしてたんだ…?)


それからとりあえずここにいても仕方がないからという事で移動する事になった。
 
 
 
 
 


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