「………」
うっすらと目を開ける。当然というべきなのか天井が視界に広がり。そして…。
「…よっ。起きたか」
声が聞こえて今度は横に目を向ける。そこにいたのはシズクさんが言ってた通り、私を待っててくれてた…トレインさん。
「…うん。あのね…。…わっ!?」
体を起こした瞬間突然肩を持たれて自分の方へ引き寄せるトレインさん。そしてそのまま私は彼の腕の中に入ってしまう。抱きしめられている状態で胸のドキドキが止まらない。
「…もう大丈夫なのか?」
「大丈夫…とは思う」
「そっか。無理はするなよ」
「…ありがとう、トレインさん」
トレインさんは私が何であんな風になったかわかっている。リンスさんが話してた事、私も聞いてたから。聞いてたけど何とも思わなかったし、私自身そんな余裕がなかったから話さなかっただけだと思う。自分の事ながらあやふやだけど。…トレインさんは知ってても聞こうとしない。ありがとう…。
「それと…色々迷惑をかけてごめんなさい」
「何言ってんだよ。俺は迷惑と思った事なんてないって。それより…」
「え?」
「明がちゃんと俺の目を見て名前を呼んでくれる。それだけで充分だ」
…古城でトレインさんが迎えに来てくれた時、返事も出来ずに彼の手を拒絶してしまった。リンスさんと古城から脱出する時も、頬に触れながら名前を呼んでくれたのに目を合わさず返事もしなかった私の傍にいてくれたトレインさん。思い返すだけでも自分がした行為に後悔しているのに、彼はそう言ってくれて涙が溢れる。少しだけ体を離して微笑んでくれるトレインさんと本気で言ってくれている言葉。…立ち直る事が出来て良かったと心から思う。じゃないと…トレインさんの笑顔なんて見れなくなっていたから。
「トレインさん…あのね…」
「おいトレイン。明の様子はどうだ…って…」
「あ」
「「あ」」
突然ミルクと匂い的に暖かい紅茶…かな。それを持ちながら入ってきたスヴェンさん。そしてその後ろにいるイヴちゃんを見て声を揃えて言葉を発する私とトレインさん。
「き、きゃあああああ!」
「どわぁ!」
抱きしめられていると改めて気づいて恥ずかしくなった私はトレインさんの体を勢い良く前方へ押してしまう。トレインさんはまさかそんな事されると思ってなかった為か、簡単に体を押せてしまった。
「お前ら何してんだ…」
「明!大丈夫?」
「イヴちゃん。うん!もう大丈夫!」
「温かい紅茶でも飲むか?」
「ありがとうスヴェンさん。心配かけて…それから迷惑をかけてごめんなさい」
「何を言っているんだ。これくらい何ともないさ」
紅茶を渡しながら優しく微笑むスヴェンさん。イヴちゃんも「そうだよ」と言ってくれて。ああもう、嬉しい。
「…あのね。皆に話したい事があるんだ」
あの時の事。司の事。そして海姉ちゃんの事。私がこれからやるべき事を。全て皆に話したい。私がそういうと皆は頷いてくれた。
…ねぇ司。私、もう大丈夫だよ。どれだけあなたに言われても、司の心を信じるって決めたから。もしも私にぶつけた気持ちが本心だとしたら私は大人しく殺されるよ。
だけどそうじゃないのなら…私はあなたを元に戻してみせる。あれが本心じゃないと思って。希望を持って。
ーーーもう、迷わないから。
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