「…だけど私が司と…海姉ちゃんの命を奪ってしまった事は変わりません。…海姉ちゃんに関しては、本当に会えませんから…」
司とはシズクさんのおかげで会えている。だけど海姉ちゃんとは二度と会えない。会えるわけが無い。そもそも司と会っている時点でおかしいのだから。
「海姉ちゃん…か。…その海さんはきっと喜んでると思うわよ」
「喜んでる…?」
「ええ。大切なあなたを守れたのだから。そして今どんな理由であっても、あなたは生きているのだから」
「………」
「明。あなたは今の世界でも生きないと駄目よ。海さんが守ってくれた命の為にも…」
一度死んでもう一度生き返ってもその命は変わらない。シズクさんが私に言う。…私今すっごく情けない顔してると思う。
「はい…!司を元に戻すまでは…絶対に、死にません…!」
「…何泣いてるのよ。ホントに泣き虫ね」
そんな事考えた事もなかった。記憶がなかったとか関係ない。私だけじゃなくてきっと他の人達だって命は誰かに守られている。そう気づかせてくれたのはこの人。…ありがとう。ありがとうシズクさん…。
「…さて。もう時間かしら」
「あ…お別れ…ですか」
「しばらくは会う事は出来ないわね」
なんでも私のいた世界に行く事自体本当は駄目だったみたい。それを無理矢理行ったからしばらくここから動けないらしい。
「わ、私のせいでごめんなさい!」
「そう思うのなら司を信じなさい。あの子があんな事を思う子じゃないって」
「…はい!必ず!」
「よし。もう大丈夫ね」
良かった、と微笑むシズクさん。すると言い忘れてたわと付け加える。私が自分にとって大切な何かを見つけるまでの期間。それを言う事を。
「期間はあなた達がクリードを倒すまでよ」
「倒すって…。もし倒せなかった時は…」
「明はそう思っているのかしら?」
「…いいえ。私はトレインさん達を信じてます」
だから大丈夫。だけどもしその時までに大切な何かを見つけられなかったら。そうなったら…私は今度こそ本当に消えるらしい。今いる世界からも消えて、完全に存在しない人になる。
「…わかってると思うけど、適当にしても無駄だから。あなたが本当に大切に思っているのを見つけるのよ」
「わかってます」
期間はクリードを倒すまで。それまでに見つけられなかったら私は消える。それが今の世界に行かせてくれた条件。なんとなくだけどそんな予感はしていた。だってもう一度生き返らせるのをタダでしてくれる訳がない。だから納得した…というか。
「クリードを倒したらあなたをここに呼ぶわ。…大丈夫よ。あなたにとっての大切な何かはもう近くにあると思う。後は気づくだけね」
「え…?」
早く気づきなさい、と楽しそうに笑うシズクさんに私は首を傾げる。気づくだけ…?わからない。私が本当に大切だと思うのは…何なんだろう?
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