「司は生きたいと願った。それだけじゃない。もう一つ…。それがあったから私はあの子をあなたと同じ世界に行かせたの」


何て願ったと思う?シズクさんにそう聞かれる。だけどやっぱり私を殺したいと願ったとしか考えられなくて。答えられない私にシズクさんは言う。


「司はあなたにもう一度だけ会いたいと願った」

「―――!」

「殺したいとかそんな理由じゃない。ただあなたに…。明に会いたいと願った」

「なん、で…」

「何で?それはあなたも同じでしょう?あなただって司に会いたいと思っていたじゃない」


…確かにそうだった。違う世界にいても結局は司や両親に会いたいしか思ってなくて。それは司もだったの?


「でも!それでも司は私を殺したいと思って…!」

「だけどそれが司の本心だと思う?よく考えてみなさい。あの子のいる場所は今どこ?」

「…クリードの所…」

「そう。いくら私でも世界を選べても、場所までは決められないわ。…不運にも司はクリードの所に行ってしまった。覚えてる?あのクリードと一緒にいたドクターという男」


RUCIFERという特性を持っているナノマシンを造った男。…まさか。ううん、考えられる事は一つだ。


「…ドクターがそう思わせるナノマシンを造って、司に注入した…?」


恐る恐る言うと頷くシズクさん。だけどそれは確信ではないみたいで。つまり本当にドクターがそう思わせるナノマシンを造って司に注入したから私の事を殺したくなるのか、それとも本気で私の事を殺したがっているか。


「可能性はあると思うわ」

「だけど…」

「後はあなたがどうするかどうか」

「どうするか…?」

「司がドクターにそうされていると信じて何とかして元に戻すか、そのまま大人しく殺されるか。後はあなたが殺すか、ね」


…もしも。本当に司がドクターにそうされているのなら。私がやる事は決まっている。


「…私は司を絶対に元に戻します。例え闘う事になっても」


私のせいで司は死んだ。この事実はいつまで経っても変わる事はない。だけどそこで泣いてたり諦めたりしたら駄目なんだ。私は…司を信じてる。あの時は色々と頭が混乱して何が何だかわからなかった。
だけど今は…違う。希望を持たなきゃ。司は本当にそう思っていないって。シズクさんが言ってくれた、"私に会いたい"という気持ちを信じて。


「決まったのね。でももし司が本気であなたの事を殺したがっていたら?」

「…その時は大人しく死にます。それが司の願いなら。それで少しでも司が楽になれるのなら…それでいい」

「はぁ…まったく。あなたのその気持ちの切替には驚くわよ」

「え?」

「さっきまで私のせい私のせいってメソメソしてたくせに」

「す、すみません…」


シズクさんのおかげ。そうとしか思えない。…ううん、それだけじゃない。トレインさん達だって助けてくれた。絶望していた私に…声をかけてくれた。たったそれだけでも助けられていたんだ。
 
 
 
 
 


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