2016/08/16 04:12


辰馬に指摘されて自覚する。


ここ最近特に目立ってあいつの形容詞に可愛い可愛い連呼しすぎてんのかと、振り返った手前の発言はまァ確かに、そんなきらいが無いでもないとはいえるものの、元々こんなだった気がしなくもねーなとも思う訳で。
それでもあんまり嬉しそうじゃねーのは、流石に見て取れる。

好きな子を溺愛しがちな傾向にあるのは、流石に自覚はしているけれども。
偏に「単純に愛い奴」って言いてぇ訳じゃねーんだよ。甘え上手で、懐き上手、その割に頭の回転は速くて且つ空気の流れを読む能力に相当長けてる。状況や立場、或いは思惑を汲み取るのが恐らく早い。そして随分と理性的な方だと俺は思って見てる。普段の振る舞いからは想像出来はしねーものの、見た目相応な懐の広さもその両腕広げた幅の倍近くあるのを俺は知ってる。
まるでその大きなギャップが能ある鷹が爪を隠すように、普段からは全くと言っていいほど匂わせない俊英ぶりが、逆に良くお前という存在感を引き立ててる。
だから普段のドジっぷりやおとぼけな所、併せて意外と繊細な面とかが微笑ましくて和ましく映える。
加えて、最近のお前は──まァ多分、俺に充てられてんだとは思うんだけど、大変な妖艶さ、あどけない艶やかさ、大袈裟に言って純粋な性欲があざとい。
言葉ひとつとったって、仕種ひとつとったって、どうしてそんなにも簡単に俺の理性を煽るんだろう、意味がわかんねーよ。どこで身につけてきたのそういう武器。
いや、元々の素質なのかも知れねーよ。

だからこう、一口にカワイイで俺は誤魔化してる。

時々襲う劣等感が、どうしても拭えなくて、
毎日毎日呆気なくお前に翻弄されて転がされて、また今朝みたくふと理性を持って行かれて時間も場所も気にせず盛って迷惑掛けたり、我に返って一人でこうして落ち込んでお前に気を使わせちまったり、そんな面しか見せられない持ち合わせてない手前自身に酷く落胆する。
俺にないものたくさん持ってる、そんなお前だからきっと俺は簡単に惹かれたんだと思う。

俺がお前と出逢って間も無く、まだ俺たちが付き合うずっと前、
染み付いて拭い切れない悪癖が、寝惚けてたとはいえ露呈した時、割と自覚したのは随分と簡単に開かされた手前の心だった。


だからきっと俺は何だってお前に応えたかったんだと思う。
許してくれるだの傍にいさせてくれるだの言ってるお前に、当たり前に振舞ってた俺にはそのセリフ達がただただ不思議でならなかった。今では何か虎と馬が巣食ってんだろうなとは思ってやり過ごしてるけど

ほら、抱くだの抱かれるだの言い合ってた時だってそう


俺の知らない所、見えない所で隠れていつも虎と馬の襲撃に身を震わせてたお前が

割りと心許なく映って、

悔しい反面、そういう謙虚なところが愛しいと思った。

とはいえ悋気の塊でしかない俺は最初こそ嫉妬で頭に血が上りすぎてて持ち合わせてる過去の重大さの違いに酷く憤慨して投げ捨てようとしてたなーなんて今更その浅慮さを恥ずかしくも情け無く思うわけだけれども

それでもやっぱりその嫉妬が拭えない



だから、俺は


お前を可愛いと形容する。


与えられ慣れてない愛情を押し付けようとしてるのは解ってる。


それでも俺は総てに於いて、お前に安心だけを与えてたい。


態度で言うと確かに格好良い、はどこが抜け落ちちまってるような面も否めねーけど、それはそれ、要するにお前も素を見せてくれてるんだって俺は思ってるよ。

寝起きに出てくる、あどけない振る舞いとか、きっとお前の本性なんじゃねーのって勝手に思ってる程に。


可愛くて、堪らない。


それにほら、お前マジで生き方が格好良いからいいんでねーの。俺にはとてもじゃねーが真似のできそうにない、その根気やその意気の在り様。格好良いよ、お前は。



大切にしたい。


だからもっとうんと我慢しねーで甘えといで、辰馬。


どんなテメーも全部全部銀さんのだだっ広い胸で受け止めてやるっつうの。


あーもう、ほんと

愛してる。

だからごめんね、可愛いって今日も沢山言わせて。

これが俺の愛情表現。
お前に宛てた、愛情表現なんだよバカヤロー。


今日も今日とて、お前が大好き。

(ありがとう、)

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