plus alpha

夜の静寂に包まれる中、ひっそりと耳に届くのは、カリカリとペンの走る音。

止まることを知らないかのように聞こえてくるそれに、カミュはシーツの上に横たわりながらため息をついた。

小さなランプの明かりだけを頼りに書類の相手をするサガの後ろ姿に、何度声をかけようかと思っただろう。

相手をして欲しいのではない。
いい加減寝てほしいと思っているのだ。

時間はどんどん進むがサガから終わる気配は伝わってこない。
…そろそろ限界だ。

「…サガ、まだ終わらないのか」

ビクッと肩を揺らしたのがわかった。
その集中力は素晴らしいと思うが、如何せん時計の針は進みすぎている。

「カミュ、寝ていたのではなかったのか…」
「まぁな。貴方が作業を終わらせれば眠ろう。」

ぐ、と詰まり目線を反らすサガ。

仕事も大事だが体も大切にして欲しい。
倒れてしまっては遅いのだ。

「あと…10分だけ」
「10分で終わってくれるか?」
「あぁ、終わらせる。」
「…、…わかった」

仕方がない、と諦めて部屋を出る。

真面目なのが彼の良いところだが、真面目過ぎるのはたまに傷だ。

鍋に火をかけながら牛乳を注ぐ。
温かくなってきたとは言えまだ少し肌寒い。

沸ききる前にカップへ注ぎ部屋へ戻る。

コトリと置くと、サガは笑みを浮かべありがとうと言った。

ゆっくり、ゆっくり、温かいミルクを体に染み渡らせながら背中を見つめ、時折カップを口にする貴方の振り向く時を待ち望む。


何だかんだ許してしまう自分の甘さが苦い、ちょっと寂しい深夜のティータイム。
一口を長く飲んだとしても、この量では全然足りない。
今か、今かと待つ私に、時計は意地悪く回る。


声を掛けるが先か、ペンを置くのが先か。


あぁ、早く。
仕事好きな貴方の背中との我慢比べは、もう飽きた。





June 19, 2012 00:38
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