流されやすいなって自分でも思うんです。
自分の意見を持っていても他人のそれを聞くと「あ、いわれてみればそうかも」って思いはじめて最終的には「そうにちがいない!」って。笑っちゃいますよね。自分の意見を自分で殺してるんです。

そうですね、良く言えばお人好しで悪く言えば責任転換のお上手な人、ですね。穏やかな川なのに他人という急流に呑み込まれて一気に下降していって、気がついたら自分で自分のことなんて分からなくなっているんじゃないですか?結局流された果てにいる人にただくっついていくんです。本当に馬鹿な人だと思いますよ、あなたは。

分かってます、だから私は自分が楽をできる道を無意識に選んでしまっているんです。今は、それがあなたなんです。

僕にどうしろと?遠回しな言い方は嫌いですよ。自分を否定しつづけてきたその口ではっきりと意見をお話しになったらいかがですか?ああ、無理ですか?その口では何も言えませんか?頑張ってみてくださいよ、ほら、がんばれー。まあ聞いたところで僕は何もしませんが。

言えません、そうです、言えないんですよ。今さら自分の意見なんて言えません。ですから、私は勝手にあなたについていきますから。あなたが正しい道を歩けば、私も正しくなれるでしょう?


「とんだ責任転換ですねえ」


「ごめんなさいね、竜持さん。それが私なんです。」


そんな私を幸せにしてくれるんでしょう、あなたは。

ええ、もちろん。気が向いたら、ですけど。


互いを純白で包みあった男女二人の後ろで、とんだひねくれもの夫婦だと兄弟二人は呆れたように顔を見合せた。


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