気温は低いのに対して、手や顔はぽかぽかとしていた。左手の感触がくすぐったくて、嬉して。きゅっと握り返せば、向こうも力を込めてくれる。流れるように熱が全身をめぐって顔が赤くなったのが分かる。それを見ていたのか「まっか」と彼も赤い顔をして笑った。「まっかだね。おそろい」と返せば彼はさらに顔を染めて小さく「うっせ」って言いながら、さらに手に力を込めた。好きだよって言ってくれて、本当に嬉しかったんだよ。嫌いなんて嘘なのに、傷ついた顔なんか見たくないのに。そうさせてしまったのは私で、こうして一人で街中を歩いているのも私。周りに人はいるけれど、左手を握ってくれるような人はもう、誰もいない。
ああ彼は今もきっと、私の身勝手な嘘に苦しめられているのでしょう。彼や私を殺したのは私だ。私は、ひとごろし。


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リモコン主が高尾を忘れられなくて、もう別れたんだよって自分に言い聞かせてるはなし。


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