必ずここに戻ろう。あなたは、そう言いましたよね。

僕がいて、みんながいて、あなたがいた場所。そこはとても心地よくて、楽しかった。
僕は人とのコミュニケーションが苦手で、みんなには分からなかったかもしれないけど。それでも、何気ない会話や、たまにする相談がすごく嬉しくて楽しくて、ヒーローになってよかったって思ったりもした。
あなたには、伝わってなかったのかな。

「大丈夫だ、折紙。スカイハイは分かってたさ。もちろん俺たちもな」

タイガーさん、と紡ぐ僕の声は震えていて。それで、頭を撫でられるとあなたに甘えたくなってしまって。

「今回は少し長引きそうですが、僕たちがすぐに片付けてみせますよ。ね、おじさん」

「おいおいバニーちゃん、俺ってばもうご老体よ?もっと労ってよ」

二人の会話にわっと笑いだす。
顔を見合わせて笑ったり、声を上げて笑ったり。
これから死ぬかもしれないなんて、嘘みたいだ。

「あんたねぇ、もうちょっとあたしたちを信頼しなさいよ」

「…そう、だね」

ブルーローズさんの不敵な笑みに、ふっと笑顔がこぼれた。彼女なりの優しさが伝わってくる。

「折紙さん!」

「折紙」

「折紙くん」

みんなが順番待ちをしていたかのように僕に声をかけ、優しく微笑んでくれた。こんなときにまで僕のことを気にかけてくれて、ヒーローっていうのはどこまでお人好しなんだ。

怖いの?ああ、怖いさ。今から行くところは、死ぬかもしれないところなんだ。怖くないほうがおかしいだろ。

まだ怖いの?もう怖くないよ。みんながいるから。

「折紙君」

「はい」

「取り戻そう。私たちの日常を」

「はい」

そう言って笑ったあなたはどこまでも逞しくて、かっこよかった。

大丈夫。僕たちはヒーローだ。
きっとまた、戻ってこられる。
性格も年齢もばらばらだけど、どこかで繋がっている僕たちに。

そんな彼らと楽しく過ごす日常と、あなたの隣に。


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ヒーロー同士の絆と、これから死と隣り合わせの仕事に行くんだよってときに不安になっちゃうイワンくん。



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