※限定ドラマCD「湯けむり、ぶらり男旅」や、「プロジェクトKARA_AGE」のネタバレを含みます。




「…人の寝込みを襲うなんて、感心しませんね。」

だってそんなの、トキヤが悪いんじゃん。
頭ではいくらでも出てくる文句は、いざ本人を前にするとなかなか言い出せなかった。

ある温泉街の近くでロケが行われることになり、そのロケついでにみんなで温泉旅館に泊まることになった。久しぶりの休日で尚且つみんなと一緒ってことが嬉しくて、すごく楽しみにしていた。芸能界に入ってお互いに時間がつくれなくて寂しいねってみんなで言っていた矢先に入った仕事で実際それはすごく楽しいものだった。

ほんとに、楽しかったのに。

露天風呂で好きな人の話を振られたときに赤くなったり、みんなに質問攻めにされて迷惑そうに、それでも楽しそうにしているトキヤを見ていて、沸々と沸き上がる何かに気がついた。
それは、紛れもない嫉妬で。

逆上せちゃったときもマサに優しく看病されちゃってさ。
普段見せないような柔らかい笑みも、俺だけのトキヤだったはずなのに。

トキヤが俺以外のみんなに心を開いたのは、いつだっただろうか。

「音也、聞いていますか?」

「……聞いてるよ、トキヤ」

股がっている体を縮こませ、顔を近づければほんのり赤く染まった。

「ねぇ、トキヤ…」

「…っ、…音也…」

顔を背けて視線を反らすトキヤに、みんなとは普通に目を合わせるのに、なんてくだらない嫉妬さえも沸き上がってきてしまう。
昼間のときとは状況が違うし、それは仕方ないはずなのに。

そういえばこの間の最高の唐揚げ弁当作りのときだってそうだ。
れいちゃんと仲良さげに喧嘩しちゃって、俺は入れないから一人でお弁当作り。
最後は二人で息まで合わせて、俺に罰ゲームを受けさせるし…

罰ゲームなんかより、二人が微笑みあってたことのほうが、よっぽどつらかった。

「ん…、音也…!やめてくだ、さ…」

「…やめないよ、トキヤ」

「…音也…?」

いつもより低い声に肩をびくりと震わせ、おずおずとこちらを見てくる。

ああ、だめだ。
やめたくないけど、やめないと。
これ以上やっていたら、自己嫌悪になるばかりだ。
トキヤには、あたりたくない。

「………」

「っ、音也!」

無言で退こうとする俺の腕を引っ張り、体勢を元に戻される。あ、と声を漏らすトキヤに何も言ってあげられなかった。

「…その、どうしたのですか…?いつも、なら、私の制止も聞かずに最後まで…」

「……なんか、途中から飽きちゃって」

「っ!」

ほんとに、何を言ってるんだと思う。
飽きるはずないのに嫉妬を誤魔化すために飽きただなんて、ほんとに馬鹿だと思った。

「…え、トキヤ…?」

「っ、すみ、ません…」

はっとしてトキヤを見れば、今にも泣き出しそうな、つらそうな顔をしていた。
一気に後悔の波が押し寄せてくる。

「トキヤ…!」

「…っ、」

気がついたら、トキヤの顔と天井が目に入った。
羽毛布団特有の柔らかそうな音。
一瞬、理解するのに時間がかかった。

「ど、したの…?」

「………あなたは馬鹿です」

突然馬鹿だと言われたことよりも、今まで以上につらそうな表情を浮かべていたことのほうに驚いた。

「あなたは、私がどれだけ音也を好きか分かっていない」

そっと俺の髪にさわってそれは愛しそうに、でも悲しそうに微笑んだあとトキヤは俺に押し倒されることになる。

「私の愛は、あなたには伝わってなかったみたいですね」

残念です。そう言って俺の上からどこうとするトキヤの腕を引っ張り、再びトキヤが下になる。小さく悲鳴を上げたけどこのまま何もしないのはよくないと思った。
このままでいたら、お互いにだめになる。

「音也、」

「俺トキヤが好きだよ!」

トキヤは俺にないものをたくさん持ってて、いつも眩しかった。俺にはできないこともできるし、常に人の前を歩いてる。自分が自分であるために何をすればいいかを分かっているから、みんなトキヤに惹かれる。もちろん俺も。

「ね、トキヤ。俺こんなにトキヤが好きだよ。トキヤに俺の好きは伝わってる?」

今までつらそうにしていたトキヤがゆっくりと微笑んで、俺の頬に手を添えた。

「はい。伝わっていますよ」

「俺も分かるよ。トキヤ、俺のこと大好きだもんね!」

そう言って笑いあったあとに、俺たちはお互いを確かめるように顔を寄せ合った。


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昔勢いに任せて書いたもの。
あまりにぐたぐたなので加筆修正すると思います。

というか消すかも、です。



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