03 さようならをしました。

私が大阪の高校へ行くと伝えれば、二人とも心配そうに眉を下げた。大輝は「何かあったらすぐ助けてやる」と言ってくれて、さつきは「毎日電話しようね!あと、知らない人についていっちゃダメだからね!」とのこと。二人とも過保護だよ。

部活の仲間、つまりはキセキのみなさまはそれぞれの反応を見せてくれた。
泣く人もいれば、おは朝占いの結果を送ってくれるという人も。主に黄瀬が泣いてばかりいたけれど、黒子くんに宥められていたな。みんなは優しく私を送り出してくれて、誰も何も責めようとはしなかった。和成とのことを話すのは気恥ずかしくてキセキのみんなには黙っていたから私を責める理由なんてないけれど、それでも自分が卑怯なことをしようとしているのは事実で泣きそうになるのを必死に堪えた。ごめんね。みんなの友達でいる資格がないと言われているみたいだった。

こんなんじゃ和成に別れてなんて言えないじゃない、と自分で自分に言い聞かせる。翌日予定していた通り約束の場所へ行けば、いつもの笑顔で私を迎える和成が見えた。「おっはよー、今日はどこ行く?」ああ私は今、こんなにも優しい彼を突き落とそうとしているんだ。目眩と吐き気と頭痛がいっぺんに私を襲う。ぐるぐると体中の血液が逆流して、春だというのにじりじりと照りつける太陽に見下されているみたいだった。

「別れよう、和成」

そして昨日、私は和成に別れを告げた。





アナウンスが大阪行きを伝え、お母さんやみんなと会うこともしばらくないのだと思うと、少し悲しくなった。

「名前、謙也くんが駅まで迎えに来てくれるって」

「わかった」

謙也くんかぁ、懐かしいな。
何年も会っていない謙也くんを思い浮かべながら、にっと笑う。

「大輝、さつき。二人で仲良くやってね」

「んな言い方してんじゃねーよ。お前こそ、無理すんなよ」

「うん、ありがとう」

「名前!いつでも帰ってきてね!!」

「休みには帰ってくるよ。さつき、大輝のこと頼んだよ」

「もちろん!」

幼なじみともしばらくお別れ。
黒子くんと黄瀬、緑間とムっくんに赤司くんも見送りに来てくれている。相変わらず騒いでいるみんなを見て、ふっと心が軽くなった。

「いってきます」

新幹線の特徴的な音が鳴ったと同時に乗り込む。ガラス越しに手を振れば、振り返してくれた。
だんだん過ぎていくみんなを、見えなくなるまで眺める。
決められた席に腰を降ろして、思ったのは和成のこと。

「…ばいばい、和成」

楽しかった日々に、さようなら。