01 別れました。

「別れよう、和成」

私の吐いた一言は、和成にはどう聞こえただろうか。
一瞬大きく目を見開かれたあとに、無表情に近い顔で問われる。

「なんで」

「別に、言う必要ないから」

「…俺のこと嫌いになった?」

「というか、はじめから好きじゃなかった」

最低なことを言って、和成を傷つけているという自覚はあった。酷くつらそうに眉をひそめる。ごめん。本当に、ごめん。
ずきずきと痛む胸を無視して、再び口を開く。

「…元々好きな人がいて、その人から付き合わないかって言われたの。」

「……だから、別れろと?」

「そう。和成とは、遊びのつもりだったし」

「…………」

元々好きな人?それは、大輝?黒子くん?黄瀬?緑間?ムっくん?赤司くん?
違う、違うよ。私が好きなのは和成で、はじめて彼のバスケを見たときから、ずっとそうだった。

「…だから、別れてほしいの」

和成は何か言いたそうに口を開くが、何も言わなかった。
ああ私は呆れられたんだ。そうなることを望んでいたはずなのに、込み上げてくる何かを抑えることはできない。

「じゃあ、もう私たちは何もないってことで」

「っ、名前!」

「……さようなら、高尾くん」

身を翻して、できるだけ速く走った。和成に追っかけられちゃたまらないから、いりくんだ路地をたくさん曲がって、闇雲に走る。

しばらく走って広い道に出たときには、息は絶え絶えなっていた。よかった、和成は追ってきてないみたい。

「…っ、かずなりっ…」

青い空を見上げて、私は大声で泣き叫んだ。