「わぁ!風丸くん、すごくきれい!」

さらさらの髪の毛に、透き通るような青色。整端な顔立ちと伏せられた瞳が、胸元に輝く紫をよりいっそうきれいに魅せている。ああなんてきれいなの、風丸くんが一番きれい。どんな子よりも風丸くんがきれい!

息継ぎもせずにそう言い切った名前に、俺は視線を這わせる。
恍惚の表情を浮かべてすくように髪をさわられても、身動ぎしない。ただ名前の気が済むまで、俺は黙って椅子に座っている。

「きれい、きれいよ。」

「……名前、」

「ふふ、なぁに、風丸くん?」

「…俺は、名前もきれいだと思うけど」

一瞬ぽかんと口を開いて固まったあとに、いつものことながら鬼の形相になる。なにがそんなに気に入らないのだろうか。だらしなく伸ばした青髪も女みたいな顔立ちも、闇しか映さない汚れた瞳も。ああでも、この紫の光だけは、すごくきれいだ。
紫しか魅せられない俺からすれば、名前のほうがずっと、

「怒るよ」

「………」

「わたしはきれいなんかじゃない。汚く廃れたただの石よ。磨けば何でも輝くと思った?おあいにくさま、わたしみたいな石っころもたくさんいるわ。」

「…ごめん」

「だいじょーぶ、」

それにしても風丸くんはきれいね。わたし好きだよ、きれいな子は大好き。

きっと俺は、名前に好きだと言ってもらうためだけに、

「あ、でも、吹雪くんもきれいだったよね!欲しいなぁ、吹雪くん。きっときれいになるんだろうなぁ…」

そこまで言ってはっとしたようにこちらを向き、「ち、ちがうよ風丸くん!」と両手を勢いよく横に振った。

「風丸くんが一番好き!風丸くんが一番きれい!」

「ありがとう」

すっと伸ばされた手は、俺の胸元まで伸びてくる。そこにかかる紫の石を、名前は再び恍惚と見つめた。

「ほんと、風丸くんが一番似合ってる」

わたし、エイリア石が似合う人って大好き。

嬉しそうに笑む名前に、俺は微笑み返すこともできなかった。