13420打企画 | ナノ






触れられる
それだけで幸せだと感じているけど
不安が無い訳じゃない
でも一緒の空間に居られる
それだけで


心臓が破れるんじゃないかと思う






本日は天気も良くて、たまには日向ぼっこでもしましょうか。と日々也が提案した。
一緒に居られたらそれで幸せな夢島は否定する事なんてする訳なくて頷く。
広い広い庭にポツリとある二人用のベンチに日々也は腰を下ろした。夢島も当然隣に腰を下ろすものだと思っていた。
しかし夢島はぺったりと地面へ座り日々也の太腿にスリスリと頬擦りをしたのだ。
日々也は微笑みながら頭を撫でたのだが、その行動が夢島にはとても嬉しく感じてにへぇと顔が緩んでしまった。
頭を撫でていた手を握って頬の方へ導き、体温を楽しむ。
日々也はそんな夢島を気にする事無く夢島を見ているだけだ。
にぎにぎにぎにぎ。
日々也の手は臨也より少し暖かくて、兄より少し冷たい。
この温度が一番好きだと夢島は思った。


「夢さん、上に座って下さい。身体が冷えてしまいますから」
「…ヤダ…日々さんの膝枕が堪能出来ない」
「…困りましたね……もう少し大きいものを作らせるべきだったか…」


二人しか座れないこのベンチに夢島が横になれば確実に脚が投げ出されてしまう。
少しでも近くに居られる様にと作らせたのだがそれが仇となってしまった。
せめていつものようにマントを羽織っていれば、それを下に敷いてあげれたのにと後悔した。
そんな日々也の考えなど知る由も無い夢島はただ幸せそうにスリスリと擦り寄る。
喉元を撫でれば気持ちよさそうに目を細めた。
ただただ可愛い人だと日々也は思った。


「夢さんは猫みたいですね」
「ふ…日々さんが猫好きなら俺は猫でいいです」
「私は猫よりも夢さんが好きですよ」
「ッ!?〜〜俺も日々さん好きです!!」


勢い良く顔を上げて告白をしてくる愛おしい人はとても可愛らしいのだ。
この人が自分以外の人を見るなんて事は考えられないし考えたくも無い。
夢島の髪を撫で、少しだけ身体を屈めて額にゆっくりと唇を落とす。
見る見る内に身体全体が赤くなり、ちゅっとリップ音をたて離れてニッコリと微笑む。
今度は勢い良く立ち上がりそのまま日々也の上に跨り抱きつき、耳元で「ひびさんひびさん」と繰り返し言う。
少し擽ったくなった日々也は肩を竦めながらも抱きしめかえした。


「…やっと上に座ってくれましたね…ほらお尻が冷たいじゃないですか」
「んっ」
「布越しでも解るくらい冷たくなって…迂闊に日向ぼっこが出来なくなりますね…」
「やっ日々さんと日向ぼっこ…ぽかぽかしたい…」
「ぽかぽか…気持ち良いですもんね…今度からは何か下に敷くものを持ってきましょうね」
「…ごめん」


小さな声で謝る夢島に怒ってないですよ、と言う意味を込めて背中をぽんぽんと叩けばおずおずと顔を覗きこまれ日々也はいつものようにニッコリと微笑む。
その笑顔に満足したのか夢島もニコニコとしながら日々也の顔を両手で包み込み、鼻先をかぷりと甘噛みをした。
鼻先だけでは足りなかったのか頬もかぷりと噛み、上唇、下唇と噛んで最後は唇を舐めたのだ。
最初は少しだけ日々也も驚いていたが、可愛い可愛い想い人の行為を受け入れる。
可愛らしいなぁ。と思いながら。
夢島も夢島で、黙って噛まれている日々也の事を可愛いなぁ美味しそうだなぁ食べたいなぁ。なんて思いながらかぷかぷとしていたのだ。
そんな事日々也が知る由も無いのだが、夢島も日々也の想いも知る事は無い。


「夢さん、お腹でも減りましたか?」
「んー、ただの日々さん不足です」
「そうですか」
「日々さん日々さん」
「なんです?」
「呼びたかっただけです」
「そうですか」


クスクス笑い合いながら夢島は再び日々也に抱き着き、首筋にすりすりとくっつける。
日々さんの髪。日々さんの匂い。日々さんの体温。日々さんの日々さんの全部日々さんの。
その事に今更気がついた夢島は心臓が破れてしまうんじゃないかと思った。
こんなにも近くに居て、匂いを、体温を感じているなんてきっと今にも心臓がバーンと破れてしまって、俺は日々さんに触れる事も愛を語る事も出来なくなるのではないだろうか?と不安になった。
しかしそんな不安を一気に吹き飛ばす自体が起きた。
いや、不安以上の何かが来たのだ。
カコカコとゆったりとこちらに音が近付いてきている。
それを聞いて日々也が少しだけそわそわしだしたのだ。
これだけそわそわする理由はただ一つである。


「ジョセフィーヌさんが来ましたよ夢さん!そろそろ家に戻らなければなりませんね!!」
「馬あぁぁぁ!!!!」


そう、馬だ。
彼女、ジョセフィーヌだけが日々也をソワソワとさせる唯一の存在だ。
ヤダヤダと言う様に首を精一杯横に振る夢島に可愛いと思いながらも彼女の美しさに心を奪われてしまう。
でも可愛いのだ。馬にまで嫉妬してくれる彼の事が。
ただ少しだけ馬に対する感情が夢島に対する感情よりも斜め上に飛んでいるだけであって。
彼にしてみれば、馬も夢島もどちらも大切な存在なのである。
馬が日々也の頬に頬擦りをすれば、日々也の顔がデレデレとする。
そんな日々也など見たくないと日々也の頭を身体全体で隠してしまう。


「夢さんこの体勢はちょっと辛いです」
「ヤです!!馬にデレデレする日々さんなんて見たくない!!」
「違いますよ!ちょっとデレただけでデレデレしてないですよ!!」
「俺にとってはどちらでも一緒です!!馬離れしてください!!」
「…難しいです…」
「日々さんのバカ!!」


ぽろりと涙が零れてしまった。
泣いては日々也に迷惑をかけると解っているのに、こんな事で泣きたくないのに出てしまった。
ぽろぽろと止まらない涙に情けなくなる。


「…夢さん?」
「…なんでもないでぇす…ちょっと鼻水出ちゃっただけですからー」


ズビズビと鼻を鳴らして日々也の上から退き、見られないように後ろを向いて袖で目元を擦った。
ああ、情けない…もっと日々也に相応しい人間になりたい。困らせないくらい強い人に。
ずびずびと鼻を吸えば、頭の上に馬が顔を乗せた。


「…馬ァ良い度胸だなぁお前」


元気出せよ。って馬が言ったような気がした。
気がしただけで馬の言葉なんてわかる訳ないのに、そう思った。
首元を撫でれば気持ちよさそうに目を細める。
こいつが居なければ日々也も外に出られないのかもしれない。
こいつが居るから日々也は無事なのかもしれない。
ちょっとだけなら許してもいいかなー。なんて考えたけどやっぱり自分以外にデレデレする日々也は見たくないのだ。
心臓が破裂しそうなくらい痛くなるから。


「私のコト、無視しないで下さい」


後ろから腰元に腕を回された。
背中に感じるのは日々也の体温だ。
心臓が無駄に動く。これはこれで破裂しそうだ。
伝えなければ、いつもいつも想っていると、幸せだと。
手に手を重ねて、きゅっと力を込める。


「日々さん!」
「はい」
「俺幸せです!」
「…急ですね」
「いつも思ってる事ですよ」
「有難う御座います、私も想ってますよ貴方の事を。…さぁそろそろ帰りましょう?日が暮れる」



家に着くまでの間、夢島は日々也の匂いを、体温を、忘れないようにと身体に覚えさせた。





幸せな一時




夢さん、
なんです?
お姫様なんですから後ろじゃなく、前に乗ってほしかったです。
…俺は後ろから日々さんに抱き着きたいです。
仕方ないお姫様ですね。
…嫌いになりました?
いえ、もっともっと好きになりました。
!?日々さん!!!
うわっ!あ、危ないですよ!!
ちゅうしましょ!!
クス、いいですよ


ヒヒン


ちっ違うんです!ジョセフィーヌさん!!これはそんな事ではなくて!!!
馬アァァァァァァ!!!!!!!!



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時兎様

リク企画ご参加有難う御座います!

嫉妬は夢ちゃんも日々さんもお馬さんもしてしまいました。
ちゃんとした日々夢話はコレが初めてになるので
ドキドキしつつ書かせてもらったんですけど
楽しく書けました!有難う御座います(*´ω`*)
ちゃんとリクエストに答えられてるのか気になりますが…
私は楽しかった…です。

気遣いのお言葉有難う御座います!
亀なサイトですがこれからもどうぞご贔屓に。
本当に有難う御座いましたー




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