イザショタシズ | ナノ




痕が残らない様にと人が必死になって手当てをしているのに
手当てをされている当の本人は知らぬフリで傷を作って帰ってくる。
今日もまた転んできたのだろう。
左の膝小僧には赤い液体が固まりかけていた。
右の膝小僧には数日前に転んだばかりでバンドエイドが張られている。
(膝だけではなく肘や頬にも張られているのだがそれは今は気にしないでおこう)
本人が転んだというので転んだ事にしてあげてはいるが
本当はいじめられているんじゃないかと気が気ではなかったりする。
過保護すぎるのもいけないと闇医者が言っていたので調べたりはしていない(今のところは、ね)


「で、今日も転んだの?」
「…そうだよ」
「ふぅん」
「………」


顔を背けてこちらの目を見ようとしない。
そういう時は大体誰かと喧嘩をしてきたのだ。
可愛い彼は短気だ。そして何気に強い。
一部の上級生から目をつけられていたりする。
しかし一方的に仕掛けるとかはしない。
今はまだこちらの方が強いけれど中学生くらいになったらやられるかもしれない。
その時はまた考えなければならないなぁ…なんてまだまだ先のことを考えた。
傷口に砂がついたままだったので
手を引いて風呂場へと連れて行けば、水で洗われると感付いたらしく
必死に踏ん張って抵抗しだした。


「あらわなくてもだいじょうぶだからッ!!」
「ダメ。ばい菌が入っちゃったら困るのはシズちゃんだよ」
「でも水いたいだろ!!」
「…だったら俺が舐めようか?」
「う…あらう」


いい子。と頭を撫でればぷぅっと頬を膨らましそっぽを向かれてしまった。
浴槽の淵に座らせて靴下を脱がす。
シャワーコックを捻り丁度いい温度になった事を確認して
膝へとゆっくりかけ洗い流す。



「ぅあッー!!」
「痛いのが嫌ならもう怪我しない事」
「…いたくない」
「あっそ」
「べつに…したくてしてるわけじゃない」
「うん。知ってるよ」


君は優しい子で暴力が嫌いな子。
俺はちゃんと知っている。
誰か助けたとかだろう。知っているよ。解っている。
だからそんなに眉を下げて申し訳なさそうにこちらを見なくてもいいのに。
でもやっぱり怪我をして帰ってくるのは頂けない。
ここはやっぱりちょっと御仕置きが必要かもしれない。
シャワーコックをキュッと捻り止め濡れた足先からタオルで拭いていく。


「シズちゃん」
「…なんだよ」
「怪我してきたら毎回するから覚えといてね」
「は?な、にを」
「消毒しよっか」


にっこりと笑顔でそう言えば
洗った傷口からは瘡蓋が剥がれ新たな血液が出てる
その場所へと舌を這わせ唇をつけた。




やんちゃな膝小僧




ひぅっ〜いざぁ
ん、もう嫌なら怪我してこないこっ
ヤァ!!!
ゴフゥ!!!!
(膝蹴りは無しだろ!…今でも勝てる気がしない…)









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